人は合理的に意思決定する。
伝統的な経済学はこんな仮定からはじまっている。
ごく簡単にまとめると、
人は限られた資源(お金と時間)の中で、
- 将来について統計的に正しい予想を立て、
- 自己の利益を最大化するような意思決定を行う
って仮定、というところかな。
私たちの行動を厳密にモデル化できない!との割切りが、
経済学と数学との出会いへとつながり、
ファイナンス理論など高度な最適化理論が生まれていった。
でも、心理学や脳科学の研究が進むにつれて、
当初の仮定を離れ、新たな経済学が語られはじめた。
そして神経経済学、進化心理学、科学哲学、複雑系科学など
多様な立場から見た経済学について語られたのがこの本。
「デカルト以来、重点は論理的な分析に置かれてきた。これからはこの論理的な分析と知覚的な認識の両者が必要とされる。」(ドラッカー)
ただ、私たちが「客観的」だと信じている、この目に映る世界は、
世界全体から「主観的」にある一部分を型抜きしたものにすぎない。
そして私たちが「意識」と呼ぶものもまた、幻想だったりする。
だから経済学が、脳と心の分野へ近づけば近づくほど、
あいまいな領域に踏み込むことになり、つかみどころがなくなるかも。
でも、それは悪いことではない。
20世紀前半に自然科学では、
により古典物理学の土台をなす因果律や決定論が破綻したことで、
革命的な変化が訪れたのだから。
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