株主価値最大化こそが正義!という旗振り役だったハーバード大学。
今ではだいぶ様子が変わっていることを認識できる一冊。
「企業の目的・存在意義、社会における企業の役割、企業と政府、企業と国家の関係に対する通念を変えることによって、収益を確保しながら公正で持続可能な資本主義を構築することが、なぜできるのか、いかにしてできるのか。15年にわたって探究してきた成果がこの本である。」
著者がハーバード・ビジネススクールで受け持つ講座は、
全学生の3分の1が受講する人気とのことで、関心の広まりがうかがい知れる。
資本主義を再構築するための中心的課題は、企業の力をいかに制限するか?
そのためには企業経営や金融・会計制度の見直し、業界全体での自主規制が必要。
長い目で見れば企業にとって経済合理性があることを、様々な事例ととも示す。
そんな内容の本だった。
第5章「金融の回路を見直す」では、GPIFの事例が紹介されている。
たとえパッシブ投資が運用の中心だとしても、
委託先の運用会社にESG重視の姿勢を浸透させるにはどうするか?
その取組みが海外で紹介されるほどの出来事だったのかと驚いた。
最近この手の本はESG投資、SDGsというキーワードに縛られすぎだったり、
単なる流行に乗っかろうとした薄っぺらいものが多いように思う。
でもレベッカ・ヘンダーソンは世界の名だたる企業の経営陣との交流もあり、
にわか専門家にはない視野の広さが感じられる一冊だった。
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