デビッド・ロブソン「なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」

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知識を得て、経験を積むとともに人は賢くなるもの。
そう願いたいところだが…

“The Intelligence Trap(知性の罠)”

に陥りがちで、

「名声ある者ほど実は愚かであり、劣っていると思われている人々ほど見識が優れていた。」(ソクラテス)

「最高の知性を有する者は、最高の美徳とともに最大の悪徳をもなしうる。拙速に進み、道を誤る者より、歩みはきわめて遅くとも常に正しい道を歩む者のほうがはるかに先まで到達できる。」(デカルト)

古くより知性に対する嘆きの言葉が数多く残されている。

私も株式投資を20年続けるなかで、経験が足かせになると感じることもあり、
最新の研究に基づく、どのようにして知性の罠に陥るのか?
そしてそこから逃れるために必要な知恵や姿勢はなんなのか?をまとめた、

を興味深く読んだ。

知性の罠の4つの類型

  1. 自らの行動から悪影響が計画を実行したり、生じるのを回避したりするのに不可欠な、「暗黙知」と「反事実的思考」が欠けている。

  2. 「合理性障害」「動機づけられた推論」「認知の死角」を抱え、いつまでも過ちを正当化する理屈を考えつづける可能性がある。これは入手可能な気づかず、証拠をすべて検討することなく、自らの信念の周囲に「理屈で固めた小部屋を作る」ことに他ならない。

  3. 「獲得されたドグマチズム」によって、自らの判断に過剰な自信を抱くようになる。それによっ自らの限界を認識できなくなり、手に負えない状況に陥る。

  4. 専門知識があるために、凝り固まった考えや無意識の行動をとるようになる。この「専門知識の逆襲」によって大惨事が迫っているという明らかな警告サインが目に入らなくなり、バイアスの影響を受けやすくなる。

用語が難しいので解説もメモしておくと、

  • 合理性障害…分析ではなく直感に基づいて判断を下そうとしたり、土台となる知識が間違っていることで、知性と合理性のミスマッチが起きること。

  • 動機づけられた推論…結論があらかじめ想定していた目標と合致している場合のみ、頭を使う無意識の傾向。

  • 認知の死角…他人の欠点にはめざとい反面、自らの偏見や思考の誤りには気づかない傾向。

  • 獲得されたドグマチズム…自分に専門知識があると考え、偏狭になり、他者の視点を無視してもよいと思うようになること。

好奇心の大切さ

知性の罠に陥らないために必要な要素として、
知的謙虚さや内省的思考とともにあげられていたのが「好奇心」。

好奇心が人生で最も重要なもののひとつと思って生きてきたから、

科学的根拠が示されていて、なんだか嬉しかった。

「好奇心は「ドーパミン作動系」と呼ばれる脳領域のネットワークを活性化するのだ。神経伝達物質のドーパミンは通常、食べ物やドラッグ、セックスヘの欲望に関係しているとされる。つまり神経レベルでは、好奇心は空腹や性欲と変わらないのだ。ただドーパミンはそれに加えて、海馬での長期的な記憶保も強化すると見られる。」

「最も興味深い発見は、「スピルオーバー(漏出)効果」だ。被験者が本当に興味のあるものによって好奇心が剌激され、ドーパミンが分泌されると、関係ない情報でも記憶するのが容易になったのだ。脳があらゆることを学習する態勢に入るのだ。」

投資家に大切なのは金銭欲に知的好奇心が奪われないこと。
約10年前に掲げた教訓はどうやら正しかったようだ。

The Intelligence Trap: なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか
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