教養としての現代アート鑑賞法/秋元雄史「アート思考」

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去年、出版記念講演にも参加した「一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞」。
著者の秋元雄史さんがビジネス書っぽい装いの本を出していることを知った。

書店で平積みされそうなビジネス書は、中身がない本ばかりで敬遠するが、
この著者の本ならば、と手に取ってみると…。

無理やりビジネス書のようなタイトルが付けられただけで、
実際の中身は「教養としての現代アート鑑賞法」
というべき内容。

日本では、なんだかよく分からない、と敬遠されがちな現代アートについて、
その意義や鑑賞法、アーティストが作品に込める想いを説いてくれている。

私自身も現代アートにまったく関心がなかったが、
社会問題などをテーマに少し先の未来が表現されたもの、
と言われれば、投資家として無関心のままという訳にはいかない。

そして一見して「わけのわからないもの」と投げ出してしまわずに、
好奇心を持って自分なり考え続けることが、世界を読み解くためには必要。
その訓練に現代アート鑑賞が役に立つということを教えてくれた。

以下はこの本の記述を編集した直したメモ。

現代アートの定義

  • 現代アートは「現在の人間像について多角的に考えて、未来に向けて、さらなる可能性を持つ新たな人間像を求め、人間の概念を拡大することに挑戦する試み」。

  • 現代アートになるための要素は、「美」を広く哲学的に捉えて、「現代社会の課題に対して、何らかの批評性を持ち、また美術史の文脈の中で、なにがしかの美的な解釈を行い意味を提供し、新しい価値をつくり出すこと」。

現代アートは何を表現しているのか

  • 時代を先取りして映し出すといわれる現代アートには、刻々と変化する世界を読み解くヒントが詰まっている。

  • 現代アートは、過去の歴史を物語として参照して、それによって個々の作品を成り立たせているところがある。前の時代と断絶しながら奇妙に結びついている。

  • 富の集中、貧富の差の拡大、後進国の貧困、非正規雇用の増加といった大きな社会問題から、SNSの承認欲求や希薄なつながり、ファストフード依存といった身近な問題に至るまで、アートは常にときにシリアスに、ときにコミカルに時代を反映し続ける。

現代アートに何を学ぶか

  • 現代アートには、普段、私たちが当たり前と感じていることを破壊する作品が数多く存在する。

  • 現代アートは、自分と社会との関係を探していく羅針盤のような存在である。そのため不確実性が増大する現代ときわめて親和性が高い。

  • 意味の重層性があり、幾重にも解釈が成り立つことが本物のアート。現代アートの鑑賞は、自らの頭で主体的に考えることのトレーニングになる。

私たちが学ぶべきアーティストの姿勢

  • アートに求められるのは、経済的・社会的成功ではなく、やむことなき自己探求をし続けること。社会に対する問題提起、つまり新たな価値を提供し、歴史に残るような価値を残していけるかどうかという姿勢を極限まで追求するのが、アーティストの願望である。

  • アーティストたちは、歴史的な視野の中に自分を置き、自らの人生を通して、新たな見方を歴史に加えるべく、日々努力する人々だ。

  • 自らの視点を持ち、そこから世界を眺めているという自負を持っているのが、アーティストであり、彼らはその自己に対する信頼が人一倍、強い人たちである。

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