昨年2019年秋にこんなに凄い本が出版されていたのを見逃していた。
リーマン・ショックから10年超にわたる金融機関の動向をまとめた一冊。
収録されるのは下記の欧米の主要な8の金融機関だ。
- JPモルガン・チェース
- バンク・オブ・アメリカ
- シティグループ
- ウェルズ・ファーゴ
- ゴールドマン・サックス
- モルガン・スタンレー
- ドイツ銀行
- BNPパリバ
翻訳本ではなく日本人が書いたものということを差し引いても、
前回の金融危機とその後の動向を俯瞰する上で、
これほど読みやすい本は他には存在しないのではないか。
ドイツ銀行の章で語られる内容は、日本に近い部分もあり興味深い。
持ち合い株式は日本独特の商習慣かと思いきや、かつてはドイツにもあったらしい。
「かつては、日本と同様、大企業と大手金融機関が株を相互に持ち合い、「ドイツ株式会社」と言われるほど密接な資本のネットワークを構築し、長い間ドイツ経済の発展を支えてきた。たとえばドイツ銀行は、1990年代初頭、多くのドイツ国内の有力事業会社の株式を保有し、自動車のダイムラー・ベンツ、保険最大手のアリアンツ、ミュンヘン再保険などの大株主でもあった。しかし、1990年代半ば以降、ドイツ銀行をはじめとする民間大手商業銀行は、保有株式の売却を進め、2000年代を通じて大半の持ち合い関係を解消させた。」
また長らく続いたドイツ銀行、コメルツ銀行、ドレスナー銀行の三大銀行体制は、
「サブプライム危機の影響もあり、経営が悪化したドレスナー銀行はコメルツ銀行に吸収された。そして、そのコメルツ銀行においても、破綻の危機からドイツ政府が救済する事態となり、10年経た現在もなお、政府が株式の約15.6%を保有し続けている。」
となり最後に残ったドイツ銀行も近年しきりに危機が叫ばれ続けている。
日本でも三菱、三井住友、みずほは根拠もなく大丈夫という思い込みがあるが、
ドイツの銀行の苦境を学ぶと、そんなに甘くないことがよく分かる。
ポートフォリオに金融株の組み入れを検討する投資家は、
この本を導入にして、各社のIR資料等を読むと理解が深まるだろう。
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