東アジアの歴史、とくに中華思想に対する認識が変わる一冊。
本書のポイントをざっくりまとめておくと、
- 中華王朝の盛衰はユーラシアの騎馬民族の出方次第
- 漢は匈奴の支配下にあったといっても過言ではない
- 北魏、隋、唐の時代はテュルク・モンゴル系の鮮卑拓跋の王朝
- 中国史上、軍事・経済で世界的に成功を納めたのは「元」の時代
漢民族による「中華」なんてものは存在しなかったわけだ。
著者がモンゴルの研究者だから元を持ち上げすぎかもしれないが、
その特徴や業績として目をひいたのは、
- 戦わずして味方に引き入れることで巨大帝国を築いた
- 現在の北京、天津、上海ができたのはクビライの事業のおかげ
- 基準通貨を銀にしたことで東洋と西洋の経済がつながった
モンゴルというと日本では元寇で戦争のイメージが強いけど、
経済政策をはじめとする国家運営についてはもう少し深掘りしてみたい。
また日本史の読み解き方についても、
中国史観の影響を受けているなぁと感じた指摘。
「中華王朝については、どんなに反乱や分裂、割拠の状態になっていても、滅亡のその日まで、あたかもただひとつの統一王朝が厳然として存在したかのように書きたがる。いわゆる王朝史観である。そのもとには、歴史を王朝事の断代史に仕切った上で、個々別々に扱う中国正史がある。現在までの中国史像は、漢文文献のくせと枠組みから、十分に解き放たれているとはいいがたい面がある。」P208
善悪の線引きをして世の中を単純化してしまうのが愚かなように、
歴史も「○年までが○○時代」とか簡単に捉えてはいけないね。
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