夢窓国師(夢窓疎石)は、鎌倉末期~室町初期の臨済宗の禅僧。
北条家、足利家、南北朝双方の天皇と敵味方分けへだてなく尊敬を集め、
まさに「国師」、国の師匠と呼ぶにふさわしい人物。※本来の意味は天皇の師
また西芳寺や天龍寺の作庭家としても名高く、
禅の精神を庭園に取り入れた「枯山水」は、夢窓国師が創始者。
庭について語った部分ではないけど、
「山水には得失なし。得失は人の心にあり。」(問答集57)
どことなく枯山水の心が見え隠れする。
さてこの問答集、内容もさることながら、特筆すべき点が2つある。
1. 足利直義の質問力
夢窓国師の世界観を引き出しているのは、「問い」の素晴らしさにある。
質問者は室町幕府・初代将軍、足利尊氏の弟、直義。
室町幕府は当初、尊氏が軍事・恩賞を、直義が裁判・行政を担当する体制。
後に2人は対立するが、幕府成立には直義の存在が不可欠だったのでは?
そう感じさせる、問答集での直義の「問い」にもぜひ注目して欲しい。
2. 編集や記録など裏方の仕事
夢窓国師と足利直義の問答は90以上におよび、1日で終わるものではない。
問答が連続・関連しているように読み進むことができるのは、
歴史の表舞台には現れない裏方の人たちが、並べ替えの作業をしたからだ。
そして、この問答の重要性に気づき、記録を残した裏方も素晴らしい。
夢窓国師はもちろん、足利直義、そして裏方。
どれか1つでも欠ければ、後世の私たちが目にすることがなかった逸品だ。
天皇から7つもの国師の称号を贈られた、最強の禅僧の言葉に耳を傾けよう。
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