1958年に物理学者が発表した一冊。著者の師匠は寺田寅彦。
エッセイ調の部分が見え隠れするのは師匠ゆずりなのかな。
「火星へ行ける日がきても、テレビ塔の天辺から落ちる紙の行方を知ることはできないというところに、科学の偉大さと、その限界とがある。」P89
「科学の限界」に対する想いはいつの時代も同じ。
再現可能性の有無が科学の領域かどうかを決めるけど、
「科学は自然の実態を探るとはいうものの、けっきょく広い意味での人間の利益に役立つように見た自然の姿が、すなわち科学の見た自然の実態なのである。」P39
私たちは知覚できる範囲内の自然しか分析することはできない。
こうした知性の限界を突破するための技法が「数学」だった。
「基本的な自然現象の知識を、数学に翻訳すると、あとは数学という人間の頭脳使って、この知識を整理したり、発展させたりすることができる。したがって個人の頭脳ではとうてい到達し得られないところまで、人間の思考を導いていってくれる。そこにほんとうの意味での数学の大切さがある。」P121
ただ自然現象を数値で表し、数学を使って読み解いていくことで、
「1つ注意すべきことは、今日の科学は数学を使う関係上、量の科学にいちじるしく傾いている。形も科学の対称になり得るものであるが、今日の科学の中には形の問題はほとんどはいっていない。」P195
という指摘がされている。
たしかに科学的な正しさを「数値」や「数式」の美しさに求めた結果、
本来は境界があいまいな「善悪」におかしな切り口が現れたり、
「偶然」を確率で飼いならそうとして「想定外」を連発してるのかも。
でも数学以外に自然を読み解く方法って…
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