世界が広がる良書「数学者の哲学+哲学者の数学」

良書に出会うと読中・読後に読みたい本が激増する。
未知の分野への関心が広がるきっかけとなる一冊との出会い
それが読書の醍醐味の1つ。

すべての学問は数学と哲学へ向かって収束していくのでは…。
そんな印象を持ち始めた矢先に出会ったのが今日の一冊。

  • 砂田利一(数学者)
  • 長岡亮介(数学史家)
  • 野家啓一(哲学者)

の三者がいつしか理系と文系に仕分けされ、離れてしまった、
哲学と数学の「間(あいだ)」 を論じた鼎談をまとめたもの。
縦書きだから数式はなく、難しい哲学用語も登場しない。
ざっくばらんに数学と哲学の歴史や世界観が語られる。

私も若い頃は数学や哲学の必要性が分からなかった。

自分の知らないことと知っていることの境界をはっきりさせ、知らないことに対して敬意を持って接し、それを理解するために何が必要であるかを明晰な言葉で緻密なロジックを組み立てて考える力がある人であれば、あらゆる分野で必要とされます。そしてそれを鍛えるのが哲学や数学だと思います。」P266

という考え方に完全に同意。そして今ではこう思ってる。
世界を読み解くための「言語」が数学で「こころ」が哲学
そして両者のバランスが崩れた仕組みは暴走するか形骸化する。
近年、経済・経営の分野では数学への偏りが顕著だった。 
サブプライムローン問題について数学者の立場から、

本来、数学というのは、モデルに対する信仰というのか、過信を防ぐために使われるべきですが・・・ただただモデルがあって、それが「いいじゃないか、いいじゃないか」と一人歩きしたのですね。・・・単純化したモデルをつくっても、その背景にあるのは、相変わらず正規分布やブラウン運動のような、非常に単純化したモデルが使われています。そういう意味で「実は現実の世界はそんな単純には語れないよ」ということは、本当は数学者が一番よく知っているはず。」P279

アメリカの金融機関等へ警告を発した数学者もいたそうだけど、
経済学は数学的な美しさを一心不乱に追い求めて崩壊する。
ポール・クルーグマン教授のコラム(2009年)にこんな一文もある。

As I see it, the economics profession went astray because economists, as a group, mistook beauty, clad in impressive-looking mathematics, for truth. Until the Great Depression, most economists clung to a vision of capitalism as a perfect or nearly perfect system.
- Paul Krugman”How Did Economists Get It So Wrong ?”

経済学だけでなく経営学でもやはり同じことが起きていた。

アメリカは多民族国家で、・・・文化が違えば同じ言葉でも意味が違うので、何がいいのかを言葉で説明しても、相手にその真意が伝わらないことも少なくありません。・・・そこで、経営の判断を定性分析的なものから定量分析的なものに変えていくために、さまざまな数字(指標)が採用されました。
原丈二「21世紀の国富論」P47

このように会社を金融商品化する発信源となったハーバード大学は、
今では哲学者、マイケル・サンデル教授を売り込んでる。
数学的な暴走を哲学によって編集しなおそうとしてるのかな。

ちなみに私自身も数学的に偏った株式投資を再構築しようと、
焦点が定まらず、様々な分野のあいだをさまよっている。
この本との出会いで漂流が収束に向かうか、もっと散らかるか…

数学者の哲学+哲学者の数学―歴史を通じ現代を生きる思索数学者の哲学+哲学者の数学
―歴史を通じ現代を生きる思索

(2011/11/08)
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