数学の魔術的な有効性/須藤靖「宇宙は数式でできている」

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学生時代に数学が苦手になり、敬遠してしまう人は数多い。
でも、須藤靖宇宙は数式でできているが指摘するように、

この宇宙は信じがたい精度で数学的な法則に従っている。

同内容の名言を残した偉人は数多い。

  • 宇宙の原理は数学という言語で記述されている(ガリレオ・ガリレイ)

  • 数学の不合理なまでの有効性(ユージン・ウイグナー)

  • 経験とは独立した思考の産物であるはずの数学が、物理的実在とこれほどうまく合致するのはなぜか?(アルベルト・アインシュタイン)

つまり数学は好き嫌いで済まされるレベルの道具ではない。

中世までは数学と言えば、古代インドやイスラム圏で発達したイメージだが、
その魔術的な有効性がハッキリしてきたのは、
ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)の登場するあたりかなと。
そしてそこから西洋が科学の発展でリードしていったのだろうと思う。

科学史を読み解くと、ガリレオのあたりから、
物体が「なぜ」動くかではなく「どのように」動くか
という発想の転換が起きている。

  • ガリレオ以前は科学現象が「なぜ」起こるかを重視。科学というより哲学的アプローチ。
  • ガリレオは科学現象の数式化を試みた、現代物理学への第一歩。

科学に「なぜ」という哲学的な問いを求めなかったガリレオが、
客観的な「時」や「数式」を持ち込み、現代物理学が進み始めるのだ。

また本書で示された一般相対論を巡る歴史から学べることが興味深い。
やや長くなるがすべてを引用すると、

  • 物理学の基礎法則は、この世界(あるいは宇宙)のどこかに刻み込まれている。物理学者は、それらを発明するのではなく、発見するのである。

  • 理論物理学者が法則の発見に至るために用いる指導原理は、多くの場合、法則は美しいという信念である。それが本当に正しいかどうかは証明できないものの、今まで知られている物理法則は、そのような信念を拠りどころとして発見されてきた。

  • 発見された法則を数学の方程式として書き下してみると、それは直感的予想とは異なる解を持つことがある。その場合、その方程式ではなく、今までの直感のほうが間違っている可能性が高い。数学的結論を疑うのでなく、逆にそれを信じて観測的・実験的に検証すれば新たな世界観が見えてくる。このように、方程式の数学的な解は、理想化された非現実的なものどころか、必ずこの宇宙のどこかに対応物が実在しているらしい。

  • 物理法則は、最初に発見した人の理解を超えた重大な意義を持つ。そしてそれは、長い時間をかけて次の世代の研究者たちが徐々に明らかにする。正しい理論の予言は、当初いくら検証困難であると考えられようとも、やがては観測あるいは実験の進歩によって直接検証可能となる。

観測したものを数学で確認する、という順序だけではなく、
重力波のように数学的にその存在が予言され、
約100年の観測技術の進歩を経て、ようやく検出可能になる話もある。

なぜこんなにも数学は役に立つのだろう?
それにも関わらず、私たちは得意・苦手と仕分けしてしまうのだろう?

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