ヌリエル・ルービニ博士と言えば、
2006年頃からサブプライムローンの拡大と住宅バブルを警告し続けた人物。
当初は頭のおかしい学者と軽んじられていたが、
2008年9月にリーマン・ショックが起きると、予言者として脚光を浴びた。
“Dr.Doom(破滅博士)”と名高い方の本が出たら、読まずにはいられない!
著者が間近に迫っていると警告する危機は、
「グローバル金融・債務危機 + スタグフレーション」
1970年代のスタグフレーション(不景気下のインフレ)では、
GDP比で見た政府と民間の債務は今の数分の一に過ぎなかった。
そして、2008年の金融危機では、インフレは起きなかった。
しかし金融危機とスタグフレーションが同時に起きてしまったら?
過剰な金融緩和・財政出動により、世界中で途方もない債務が積み上がっている。
労働人口が増え続け、経済が持続的に成長するなら、債務の解消は可能だが…。
返済できない額の債務を抱えた状態で、インフレ対策のために政策金利を上げたら…。
これから起きる金融危機はかつてない規模になるのは間違いない。
そしてスタグフレーションを誘発する潜在的な要因は数多い。
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先進国と新興国の人口高齢化 → 若い労働者が減り、賃金上昇・成長鈍化
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移民排斥 → 賃金上昇
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脱グローバル化・製造業の国内回帰 → 輸入物価の上昇、生産コストの増加
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米中冷戦などの地政学的脅威 → 台湾の半導体危機、中東の石油危機等
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気候変動 → 脱炭素によるエネルギー価格上昇、自然災害による生産・供給危機
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パンデミックの頻発
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所得と富の格差 → 労働者・失業者を守る財政出動は賃金とインフレを起こしやすい
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サイバー攻撃によるサプライチェーンの混乱
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基軸通貨ドルの地位低下
著者はこれら様々な現在の危機について解説した後、
今後の展望として悲観的と楽観的シナリオを示しているが、
楽観的な方が…え?!
「メガスレットを引き起こす問題の多くには、強力な経済成長を前提とした解決策が必要になる。どのくらいの成長が必要かと言うと、先進国で5〜6%の成長を長期に続けられるなら、債務を解消し、気候変動、高齢化、技術的失業、将来のパンデミックに取り組むことができるだろう。」
先進国で5~6%の経済成長が長期に続くというのは、
多くの投資家が現実的ではないと感じるのではないか。
ならば投資家必読の部分と言えるのは、、
著者が悲観的シナリオで示した金融資産を守る方法(P373~378)。
ひとつ他では見かけない話を紹介すると、
「今後20年の内に政治・社会・技術・健康・環境面で大混乱が起きるということは、現在の株価指数(ダウ平均、S&P500、日経平均、FTSE100、ユーロストックス50など)の構成銘柄が時代遅れになることを暗に意味する。理想的なのは、未来の企業、未来の産業に投資することだ。そうした企業の多くは株式公開前で上場されていないため、プライベートエクイティやベンチャーキャピタルにアクセスできる上級の投資家かコネを持つ投資家でないとむずかしい。ただし、未来の企業や産業のひとつの代表としてナスダック100がある。・・・ただ、ナスダック100は現時点では株価収益率が高すぎてバブル気味なので、割高な価格で買うことになる。それよりも、次の深刻な景気後退で下がるのを待つほうがいいだろう。」
リーマン・ショック以降、十数年、大きな金融危機は起きていないため、
株価指数への積立投資だけで、お手軽に資産が増えただろう。
これからも本当に今のままの投資法で大丈夫なのか?
その点検のためにも、本書でこれから起こりうる危機を学ぶべきだろう。
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