今なお続く「民主制vs独裁制」の原点/ヘロドトス「歴史」

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ヘロドトス「歴史」再読まとめのつづき。

ペルシア帝国のダレイオスが勢力が広げ、ギリシアに狙いを定めた頃、
アテナイでは独裁的な僭主として君臨していたペイシストラトス一族を国外追放。
クレイステネスの改革を経て、民主制が完成しようとしていた。

ギリシアが後に攻め寄せるペルシア帝国の大軍を退けることができたのか? 
ヘロドトスはその答えを統治体制に求め、
様々な場面で民主制(ギリシア)と独裁制(ペルシア)を対比する。

「かくてアテナイは強大となったのであるが、自由平等ということが、単に一つの点のみならずあらゆる点において、いかに重要なものであるか、ということを実証したのであった。というのも、アテナイが独裁下にあったときは、近隣のどの国をも戦力で凌ぐことができなかったが、独裁者から解放されるや、断然他を圧して最強国となったからである。これによって見るに、圧政下にあったときは、独裁者のために働くのだというので、故意に卑怯な振舞いをしていたのであるが、自由になってからは、各人がそれぞれ自分自身のために働く意欲を燃やしたことが明らかだからである。」巻5・78(岩波文庫・中巻P191 )

ペルシアへの降伏を促されたスパルタの使者はこう語ったと記す。

「ご忠告くださるあなたは、なるほど一面のことは経験済みでおられるが、別の一面のことには未経験でおいでになる。すなわち奴隷であることがどういうことかはご存じであるが、自由ということについては、それが快いものか否かを未だ身をもって体験しておられぬのです。しかしあなたが一度自由の味を試みられましたならば、自由のために槍だけではない、手斧をもってでも戦えとわれらにおすすめになるに違いありません。」巻7・135(岩波文庫・下巻P97)

つまり独裁者に従うあなた方は奴隷のようなもの。
一度自由を知ったら独裁者の支配を逃れようと命をかけるものですよと。

すでに紀元前5世紀の書物で独裁なんてまっぴらごめん!
と表明されているが、今なおこれに近い統治形態は残り続けている。
理想と現実は違う、というのが2,500年も続けば、どうにもならないということか? 
自由の抑圧をよしとする文化的背景を持つ国もありそうだし…。

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