ジェイムズ・ロム編「セネカ 死ぬときに後悔しない方法」

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セネカ「生の短さについて」を再読しようと思い立ったが、
誰かが編集したもので新たな視点が欲しいなと手に取った、

でも読んでみたら、「生の短さについて」ではなく、
皇帝ネロによって死に追い込まれる最晩年に書かれた、
倫理書簡集」(親友に宛てた手紙)を中心に編集した本だった。

多くの人々が暴君の気分ひとつで命を奪われていた時代。
セネカは自分にも魔の手が迫っていることを感じていたのだろう。

「賢人は決して、追い出されるようにして、この世を去ったりしない。追い出されるとは、意思に反して、無理やりに立ち退かされることだ。賢人は、なにごとも不本意におこなったりせず、人に強制されて行動することもない。つまり、死を迫られる前に、自分から進んで立ち去るのである。」

徳に欠けた生き方をするくらいなら、自ら死を選ぶ方がよいとさえ考えていたようだ。
死の恐怖から自らを解放しようと、言い聞かせているかのような一節も散見される。

「生きる覚悟よりも先に、まずは死ぬ覚悟を決めなくてはならない。」

「死を恐れる原因は、死そのものではなく、人が死についてあれこれと巡らせている考えにある。死と我々との距離は常に変わらず、一定なのだ。」

「千年前に、自分が生きていなかったことを泣いて悲しむ者がいたら、実に馬鹿ばかしいとは思わないかね? 千年後に生きていないことを泣いて悲しむ者も、それと同じだ。両者に違いはない。かつて存在していなかったように、君はいずれ存在しなくなる。過去も未来も、君には関係がないのだ。」

そして人生をテーマにした古典には常に登場する、
過去や未来に囚われず、今このときを生きろ!という教え。

「わたしは、毎日が人生の縮図となるように生きている。むろん、人生最後の日にしがみつくようにではなく、今日が最後になってもよい、と思えるように過ごしている、ということだ。」

「明日という日さえも意のままにならない我々が、人生を計画通りに進めようとするのは、浅ましいことである。」

「物事を始めるとき、先の先まで思い描こうとする者は、大きな思い違いをしている。いいかね、どれほど幸運に恵まれた人間でも、確実なものは何もない。一切、未来のことを当てにしてはいけないのだ。」

このあたりの話の現代版として有名なのは、
スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学・卒業式でスピーチだろう(2005年)。

人生の最後に訪れる死といかに向き合うか、
それを考え続けることが、人の生き様を左右するのだ、
というセネカの信念が伝わってくる名文の数々。。。

「満ち足りた人生かどうかは、生きた年月の長さではなく、自分の心のあり方によって決まる。」

セネカの「倫理書簡集」、岩波文庫で出版してくれないかな。。。

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