邦題の安っぽさがもったいない。
原題は"Survival of tha Prettiest ― The Science of Beauty"
本書は副題の示すとおり「美の科学」がテーマ。
結論はごく単純なもの。
「人が美しいと感じるもの=遺伝子を残すのに最適な姿形」
これに多彩な切り口(生物学・心理学・ファッション史など)で迫っていく。
だからタイトルの翻訳は、チャンドラーのあの台詞※に倣って、
「美しくなければ生きていけない」みたいなのがふさわしいかも。
人で語ると目を背けてしまいがちだから、ビジネスに置き換えてみよう。
マーケティングなる言葉が重視されるようになって久しいが、
乱暴に言えば、商品・サービスの外面を磨いて客を引き寄せる技術。
良いものを作れば顧客はついてくる、と愚直に進んだ日本が敗れ、
マーケティングの巧者アメリカが再浮上した歴史的事実は、
まずは「中身より見た目」ということを物語っていると言えるかもよ。
美人薄命? 美人は性格が悪い?
いえいえ、ウエストがヒップの80%以下の女性は妊娠しやすく健康的。
美しさは周囲の善意を引き出すから、性格も自然とよくなるのだ。
そして乳幼児でさえ美しさを感知するという実験結果まで紹介する。
著者はこんな調子でバッサリ斬り倒す意図はこうだ。
「人間の本質について深く知れば、それだけ不平等を指摘し自分たちを変える可能性も生まれるだろう。科学的な研究は、価値をさだめることではない。そして人間が生まれながらにある傾向や好みをもつとしても、文化や教育や環境でその表現は大きく変わりうる。」(P277)
「見た目より中身が…」なんてのは現実から目を背けているだけ。
「美しさのために時間を浪費しなければ、それ以上のものが達成できるという意見はナンセンスだ。女性は美をあきらめないでいてこそ、法的にも社会的にも平等の権利や力を獲得することができる。」(P279)
本質的な美しさは遺伝子のたまもので、不平等の最たるもの。
ただ私は美しさを追求する女性には感心させられるし素敵だと思う。
だから私は美の追求を支援する会社(資生堂、ロレアルなど)へ投資する♪
なぜ美人ばかりが得をするのか (2000/12) ナンシー エトコフ 商品詳細を見る |
※レイモンド・チャンドラー「プレイバック」より
”If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.”(男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない。)
コメント