ビジネス書と呼ばれる本は基本的にくだらない。読むだけ時間のムダ。
もし読むのなら、新刊ではなく、時の風化に耐えた本がいいだろう。
というわけで、江戸時代の井原西鶴「日本永代蔵」なんてどうかな。
仕事と人生、お金との付き合い方を説いた元祖ビジネス書。
先日、鎌倉時代の億万長者になる秘訣(徒然草)を紹介したから、
今日はその江戸時代版を日本永代蔵の巻三から紹介するね。
表題は「煎じよう常とはかわる問薬」。
お金持ちが長者丸なる妙薬を40歳の小市民に処方する話。
その薬とは50両を下記の配分で調合したもの。
- 朝起(早起き) 5両
- 家職(家業) 20両
- 夜詰(夜なべ) 8両
- 始末(倹約) 10両
- 達者(健康) 7両
仕事は40%にすぎず、やっぱり倹約(20%)がかかせない。
この後、薬の効能を邪魔する毒として浪費の例も列挙されている。
健康に14%というのは納得だね。体調が悪いとどうにもならないから。
また、早起きと夜なべ(26%)については詳しく書かれていないが、
常に向上心を持って学ぶことや人との交流のことかもしれない。
この時代だから(?)、もちろん資産運用なんて発想はない!
この薬を処方してもらった人はその後、
大工が道に落とした檜の切れ端を拾い集め、箸を作るビジネスを始める。
これが成功し、長者丸の教えを守ることで、約30年後に億万長者となる。
誰もがゴミだと思っていたものに自分だけの価値を見い出す。
西鶴はこの型が好きで、巻一の「波風静かに神通丸」の話では、
港に積み卸される米俵からこぼれた米を拾い集めた人が
食べきれない分を売ることで事業の元手を稼ぎ、やがて長者となる。
そしてこんなビジネス書としての西鶴に着目した本が発売された。
江戸文化研究家、田中優子さんの「世渡り万の智慧袋」 。
興味のある方は読まれてみてはいかが?
コメント