今年はじめて読んで感銘を受けた日本の古典は、
の2冊。
宮本武蔵の「五輪書」は今まで読んでなかったのが不思議。
羽生善治、カスパロフといった勝負師の書物以外には、
投資の参考になる本はない、と考えていたけど、
ひとつの「道」を極めた達人の古典を忘れていたね。
「五輪書」の末尾に書かれた武蔵の言葉、
「正しく明らかに、大きなるところを思いとって、空を道とし、道を空と見るところなり。」
やはり「道」とは「まごころ」であり、
それを貫いた先に一切の迷いなき「空」に到達できる。
投資だけでなく人生全般への教えがあふれた一冊だった。
もう一冊は源平合戦前後を描いた「建礼門院右京大夫集」。
藤原定家(新古今・百人一首の撰者)との交流がありながら、
この人の和歌と言えば!という代表歌がないから、
歌人としての評価はそれほど高いものでもなかったのだろう。
でもこの歌集は、長めの詞書に和歌が織り込む編集法で、
詞書により和歌に込められた想いが押し寄せてくる。
月をこそ ながめなれしか 星の夜の 深きあはれを こよひ知りぬる
の和歌にそえられた詞書は星空を描いた古典の名文だ。
武士の視点で歴史を淡々と描いた「平家物語」よりも、
心を揺さぶられる、素晴らしい名著だった。
また2013年は岡倉天心の没後100年にあたることもあり、
名著「茶の本」を扱った記事へのアクセスが多かった。
1906年に英文で世界に発信されたこの本は、
日清・日露戦争で日本がおかしくなっていく分岐点で出版。
失われゆく日本の面影に焦燥感を抱く中で描かれた名著。
日本が失ってはいけなかった美意識がここにある。
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