2008年5月。30歳の誕生日を迎えた頃に気がついた。
20代に追いかけたしあわせのかたちは、まったく見当違いだったと。
それ以来、古今東西あらゆる幸福に関する本を読み続けている。
このあたりでいったん、オススメの本をまとめてみたい。
まず「世界三大幸福論」から2冊。
ヒルティの「幸福論」は宗教・道徳的な方向に偏りがちなので外した。
ラッセルは前半は「不幸」、後半は「幸福」をもたらすものを説く。
当ブログで頻繁に引用しているお気に入りの一冊。→該当記事一覧
アランはラッセルと比べると少し文学的な印象を受けるかもしれない。
でも「笑うから幸福なのだ」「社会は奇跡の場所」といった表現が美しい。
ラッセルが20世紀初頭に危惧した
「典型的な現代人が金で手に入れたがっているものは、もっと金をもうけることで、その目的はと言えば、見せびらかし、豪勢さ、これまで対等であった人たちを追い越すことである。」
は、経済活動において極端に数字や論理を重視する風潮へとつながり、
今まさに金融市場の崩壊、経済の大停滞、価値観の喪失に直面している。
そんな今、読みたい幸福論は、個人投資家にはおなじみの
原題は"Enough. True Measures of Money Bussiness, and Life"
「足るを知る」を中心に、古代から現代までの名言を引用しながら、
マネー、ビジネス、人生のあるべき姿を語る名著だ。
同じスタイルで印象的だったのは、日本のバブル崩壊直後のベストセラー
西行、兼好、芭蕉など日本の古典を縦横無尽に引用しながら、
日本の文化伝統の「清貧」に人の幸せを見いだそうとした逸品。
3年前、この本に出会ったのをきっかけに私の愛読書となったのが、
生前は何者にもなれず、最愛の人をも失い、世の無常を胸につづった、
「人生とは?」「人の幸せとは?」は、日本最古の幸福論だと思う。
古典つながりで中国から1冊選ぶとすれば、明の時代に書かれた随筆集、
漢民族の歴史が明で途絶えることもあり、中国数千年の人生訓を集大成。
富と幸福、人との交わり方、心静かに生きることの大切さを説いた名著。
「世間では名誉があり地位が高いことが幸福とされるが、そうしたことに無縁の人の方が幸せに生きていることを知らない。」(菜根譚・前集66)
もう一度、時代を現代に戻し、日本の仏教の視点から3冊。
酒井雄哉さんは「今いるところが一番幸せ」と気がつくことの重要性を、
寂聴さんは人の幸せには「愛」が不可欠だと説いた。
玄侑宗久さんは「しあわせ」という日本語の語源を探ることで、
日本と西洋の幸福感の違いを説いた。→紹介記事
「他者の振る舞いと合わさって、思ってもみないことが起こり、その巡り合わせを楽しいと思った。本来の日本人が感じる「しあわせ」というのは、そういうことだったのではないでしょうか。」(しあわせる力・P111)
最後にゆる~い本を1冊。
読者からの人生相談に所さんが答える、という形式の本。
私がファンだから、という理由で様々な名著と同列に並べてしまった(笑)
「何事も準備万端整えて始めるより、半端な用意でもどんどんやり始めてあわてたりするのが、楽しいんですよ。そういう考えでいると、春夏秋冬、いろんなことがあって退屈しないし、いっぱい達成感がもてると思う。」(P56)
こんな人生を送ることができたら、しあわせだよね。
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