東京は親子どんぶり/ロジャー・パルバース「もし、日本という国がなかったら」

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日本を単一の民族・文化・社会と見るのは間違っている。
このことを身をもって実感したのは、福岡出身の妻と結婚してから。

普段は気が付きにくい「多様な日本」を理解するには、
海外からやってきた日本好きの識者の意見を参考にすべきだろうか。

ロジャー・パルバースは日本の様々な地域をめぐって、
本来なら50近いの独自の文化が見られるが、5つに絞るならば、

  • 東北…類を見ない神秘性
  • 東京…親子どんぶりのような「拝借文化」
  • 京都…やわらかく感性的な、女性の文化
  • 北九州…韓国文化の美しい影響
  • 沖縄…中国、ポリネシア、東南アジアの文化の名残

印象的なのは東京を「親子どんぶり」と表現していること。
あらゆる日本文化の基になる器に載ったご飯。
そこに乗せられた半熟卵がご飯のすきまに滑り込み、
味が全体にゆきわたってゆく。。。

子供の頃、社会科の授業で「アメリカは人種のるつぼ」と習ったが、
その縮小版が江戸時代の参勤交代以来続く、東京の拝借文化ということか。

そして近年の会社経営に絡めて使われる「ダイバーシティ」とは、
美味しい親子丼になれるかどうか、ということなのだろう。
「ごちゃまぜ」の方がより組織が強くなる、ということなのだ。
もちろん土台となる白いご飯があっての話だが。。。

著者が愛してやまないのが東北。
言葉が理解できず自らの日本語に対する自信を打ち砕かれ、
石川啄木、宮沢賢治、太宰治を生んだ神秘的な存在感を放つ地。
東北の神秘性は「座敷わらし」のようである、と謎の表現で賞賛していた。

全編にわたり日本を賞賛する一冊だが、著者が私たちに一番伝えたい想いは、
宮沢賢治の「農民芸術概論綱要」の引用に込められているように思う。

「正しく強く生きるとは、銀河系を自らの中に意識して、これに応じて行くことである。」

銀河系とは世界観であり、自国の文化への誇りみたいなもの。
今の日本人はそれを持たないまま、経済のみグローバル化に乗ろうとしている。
それではダメだろう、という戒めが込められた日本礼讃なのである。

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