温故知新。その解釈の歩み。

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温故知新。

子曰、温故而知新、可以為師矣。(子曰く、故きを温ねて新しきを知る、以って師と為るべし。)

この論語の一節から派生して、
今では誰もが大意を知る四字熟語として定着している。

しかし過去に様々な解釈がされてきたことを
片山杜秀「歴史という教養」を読んで知った。

朱熹「論語集注」

朱子学の創始者、朱熹(1130~1200)が論語に注釈を付した「論語集注」。

朱熹の解釈では「温故知新」とは、

  • 故…「旧聞」。弟子が師から学んだこと。
  • 温…「尋」。習ったことを尋ねる。すなわち復習を意味する。
  • 知新…今、習ったこと。今、分かったこと。

師から学んだことをよく復習した上で、新しいことを習う。
そうすることで前のことも新しいこともより深く学ぶことができる。

この頃はあくまで学習の心得を説いたものと解釈されており、
今の私たちが考える「歴史に学ぶ」という意味合いはなかったようだ。

伊藤仁斎「論語古義」

江戸時代の儒学者、伊藤仁斎(1627~1705)による解釈書「論語古義」。

  • 温故…朱熹とほぼ同じ解釈で、師から教わったことの復習。
  • 知新…新しいことを考えつくこと。

「温故」と「知新」を因果関係でつなぐのではなく、
並列で捉えているのが仁斎の解釈の新しいところ。

荻生徂徠「論語徴」

江戸時代の儒学者、荻生徂徠(1666~1728)は「論語徴」で、
朱熹も仁斎も「温故」の解釈が間違っていると指摘する。

  • 温…「尋」ではなく「習」を指す。「故」を習うことが指し、復習ではない。
  • 故…昔のことで伝わっている事柄すべて。

すなわち「温故」とは歴史に学ぶことであると。

そして歴史に学び今に生きる力を身につけることが「温故知新」。
ここ遂に今の私たちが持つイメージと同じ解釈になった。

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