明朝末期の随筆集、洪自誠「菜根譚」。
中国では注目されず、日本の儒者が編集・刊行し今に残る。
料理に絡めた人生訓を読むと、なるほど中華より和に近い。
まずは前集7項より。
醲肥辛甘非真味。
真味只是淡。
神奇卓異非至人。
至人只是常。
醲肥辛甘(じょうひひんかん)は真味にあらず。
真味は只だこれ淡なり。
神奇卓異は至人にあらず。
至人はただ是れ常なり。
料理の真の味わいとは、さらりとして淡泊なもの。
才能があってもひけらかさず、無欲に淡々と生きなさい。
「真味只是淡」は、和の「お椀」ものに向き合ったときに感じる美学。
淡い味の先にある何かを探したくなるような奥深さ。余白の美か…。
後集25項では、なぜ淡い味付けが良いか語られる。
争先的径路窄、
退後一歩、自寛平一歩。
濃艶的滋味短、
清淡一分、自悠長一分。
先を争うの径路は窄(せま)く、
退きて後ること一歩なれば、自から一歩を寛平にす。
濃艶の滋味は短かく、
清淡なること一分なれば、自から一分を悠長にす。
人と先を争えば道は狭くなり、一歩譲れば広くなる。
味付けの濃い料理は、その場限りの美味しさにすぎず、
少し味付けを控えれば、後をひく味わいとなるだろう。
飽きのこない味。日本料理は「淡」へと行き着いた。
「花霞」や「朧月」といった日本の情趣も背景にあるのかな。
そして日本の美徳、「あいまいさ」にもつながるだろうか。
私はラーメンから美食に目覚めたけど、最近のスープの味は濃すぎる。
豚骨スープは、他の味を覆い尽くすから、もとより眼中にはない。
つけめん登場とともに、魚介系の出汁が濃くなり始めて変になったのかな。
濃い出汁をひけばひくほど、美味しいと感じる塩分の量が増えちゃう。
スープを飲み干したくなるラーメン。荏原中延の多賀野くらいかな。。。
人生訓の菜根譚で食べ物の話ばかり…まぁいいか(笑)
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