「弱さ」にこそ「強さ」の源がある。
こんな不思議な反転を初めて指摘したのは、老子だと思う。
私の考える老子の根幹は「水のようにしなやかに国を治めよ!」。
「しなやかに生きろ!」と人生訓に読みかえることもできる。
上善は水のごとし。
水は善く万物を利して争わず、衆人の悪む所におる。
ゆえに道にちかし。
ここで「水」こそが最善のあり方と説き(第8章)、
第78章ではもう少し踏み込んで、水のありようをたたえる。
天下に水より柔弱なるはなし。
しかも堅強を攻むる者、これによく勝るものなし。
そのもってこれを易うるなければなり。
弱の強に勝ち、柔の剛に勝つは、
天下知らざるものなきも、よく行なうものなし。
この世に水より柔らかく弱いものはないが、
弱さが強さに勝ち、柔らかさが堅さに勝つのが世の定め、と説く。
水に理想を求めた老子は「私には3つの宝がある」と語りはじめ、
水の柔らかさ、弱さを具体的な教えへと昇華する(第67章)。
我に三宝あり、持してこれを保つ。
一に曰く慈、二に曰く倹、三に曰くあえて天下の先とならず。
慈なり、ゆえによく勇なり。
倹なり、ゆえによく広し。
あえて天下の先とならず、ゆえによく器の長となる。
もちろん、元々は国の治め方を説いた一節だけど、
人生訓と捉えた場合の出典不明の名訳があるので紹介すると、
優しくなりなさい、そうすれば勇敢になれる。
つつましくなりなさい、そうすれば広い心を持てる。
人の前を行かないようにしなさい、そうすれば人を導く者になれる。
老子(岩波文庫)
(2008/12/16) 蜂屋邦夫 訳 |
【おまけ】
同時代の孔子の教えにも水が登場する。(雍也第六23)
子の曰く、知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。
知者は動き、仁者は静かなり。</br />知者は楽しみ、仁者は寿し。
このあたりの中国古典にあらわれる「水への愛」は、
後に日本の枯山水庭園の思想的背景となっているような気もする。
コメント
漫画のバカボンドにも『水』の事が描かれていたなぁ~。。。
水は人がいつの世も羨むスタイルなのかもしれませんね~
「水」への愛は稲作文化が背景にあるのかもしれません。
NHK100分de名著 http://www.nhk.or.jp/meicho/
の次回テーマが「老子」なのでぜひ。