私のお薦めテレビ番組NHK「100分de名著」。
今月は中国明代の古典「菜根譚」が取り上げられている。
中国の古典から好きなものを一冊選べと言われると、
「老子」と「菜根譚」で迷う。私にとってそんな一冊。
というのが菜根譚について紹介した直近の記事。
淡い味わいの料理は飽きが来ず、後を引くものだから、
人生も無欲に淡々と生きるべき、という教えだった。
今日はそれだけではダメ!という続きのような話を2つ。
まずは前集29項から。
憂勤は是れ美徳なり。
太だに苦しめば、即ち以って性に適い怡ばしむる無し。
澹泊は是れ高風なり。
太だ枯るれば、則ち以て人を済い物を利する無し。
仕事に邁進することは美徳だ。
だが度が過ぎれば、身心が疲弊してしまう。
さっぱりとこだわりがないのは、高尚な気風だ。
だが度が過ぎれば、淡泊すぎて役に立たない人間となる。
次に前集41項。
念頭濃なる者は、自から待つことに厚く、人を待つこともまた厚く、処々皆濃なり。
念頭淡き者は、自から待つこと薄く、人を待つこともまた薄く、事々皆淡し。
故に君子は居常の嗜好は、太だ濃艶なるべからず、また宜しく太だ枯寂なるべからず。
念入りな心の持ち主は、気がきくがややひつこい。
淡泊な心の持ち主は、さっぱりしているが無頓着すぎる。
だから君子はその間、中庸を大切にすべきだ。
先に紹介した前集7項と後集25項は、
「足を知る」に代表される老荘思想の考え方。
それだけでは独りよがりの心の悟りに陥る恐れもある。
そこで孔子の「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」
という教えを組み合わせ、社会貢献への道を切り開く。
それが今回の前集29項と前集41項の話になっている。
菜根譚はこうして古典を自在に編集した随筆集だから、
「中国五千年の人生訓を集大成」と名高い傑作なのだ。
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