長期投資を前提に考えた場合、一番の不安材料と言えば、
株式会社と証券市場は今のまま、あり続けられるのか?
という疑問。
昨年読んだ奥村宏氏の本では、
巨大企業が解体されてゆく未来が示されていた。
エコノミストというよりも経済史家に近い印象のある
水野和夫氏の最新刊「株式会社の終焉」も似たような結論かも。
本書が示す株式会社の未来像を簡単にまとめておくと。
まずは中世と近代の成長率のデータを示しながら、
「西ローマ帝国が滅んだ直後から中世が終わるまでの間(500〜1500年)、世界の一人当たりの実質GDP成長率は、わずか年0.03%でした(500年で1.35倍)。近代(1500〜2010年)になると、それが年0.22%になります(同期間で26.9倍)。とくに第二次世界大戦後の1950年から石油危機直後の1975年まで、世界の一人当たりの実質GDPは年3.4%と著しい成長率を示しました。」
日本の近年の状況から世界は中世への回帰に向かっていると指摘。
これからは潜在成長率がゼロであることを前提に考える必要があり、
「マクロ経済がゼロ成長なら、その内訳である企業利潤、雇用者報酬、そして減価償却費も去年と同額(対前年比増減率がゼロ)でいい。」
というのが本来あるべき姿であると説く。
そしてこのあるべき姿から歪んでしまった部分を是正する。
- 1999年度以降、新自由主義の影響で歪んだ労働と資本への分配を見直す。
- 1998年以前から日本が抱えてきた過剰な資本を是正する。
この2つの段階を踏むことで株式会社は、
- 増益を目標とした経営計画が不要になる。
- 減益計画でも生き残れるのは内需型の企業。
- 株主は地域住民で、配当は現物給付になる。
という未来像が示されている。
という考え方の私にはちょっと困った未来。
でも身近なところでも少し心当たりはある。
最近、ESG投資(環境、社会、ガバナンスを考慮した投資)が脚光を浴びている。
でも投資の意思決定により良い未来に対する一票を!という本質的な話ではなく、
その方がリターンが良くなりそうだから、という表面的な話が増えたように思える。
高齢化社会→年金運用に高リターンが必要→投資家は企業に増益・高配当を求める
という構造はどうやっても変わらないから、
株式会社と証券市場を壊すところまで進んでしまうように感じている。
上場しない小さな会社や組織が主体の時代がやってきてもおかしくはない。
ふと思ったのだけど「配当が現物給付=株主優待」ならば、
桐谷広人さんの株主優待生活は時代を先取りしているのかも?
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