イギリスの伝統ある経済誌「エコノミスト」。
2000年代においても部数を伸ばす世界でも稀な雑誌だ。
※2001年…76万部、2015年…155万部(本書「はじめに」より)
その「エコノミスト」が2015年10月~2016年1月に取り上げた
ドル、元、仮想通貨に関する記事を集め、翻訳したのが本書。
特別付録として書き下ろしの「円の未来 黄昏の安定通貨」が追加。
基軸通貨の交代が起きるかどうか?が本書のメインテーマ。
現状では起きるとしてもまだ先の話という書かれ方になっている。
「ドルが覇権を握る現状が安定を欠いているとはいえ、未だドルのライバルは存在しない。ユーロは将来にわたる存続の保証がなく、人民元を発行する中国は金融市場の全面開放がなされておらず、法の支配も受け入れていないからだ。」
「基軸通貨がポンドからドルへ移行したときと比べると、今回は新旧勢力の力が拮抗している。いまのアメリカは、急激な衰退を経験したときのイギリスよりずっと強く、一方のいまの中国は、上昇気流に乗りはじめた頃のアメリカよりも弱いのだ。」
10年、20年先にアメリカが経済力の面で中国に劣ったとしても、
金融やテクノロジーの分野で世界のトップに君臨し続ける可能性があり、
果たして基軸通貨が交代することがあるのか微妙なところ。
中国語が国際語としての地位を英語から取って代わるくらい難しい?
「中国は、人民元を基軸通貨にしようとするならば、市場を全面開放したり、法の支配を確立させたりする必要がある。それが実現するどうかは、中国政府がどのような政策を選ぶかしだいである。」
そもそも中国政府にはここを解決する気があるのか?
ユーロもここ数年ですっかり存在感を失ったように、
ドルの対抗馬は元ではなく、伏兵の仮想通貨なのかもしれない。
「基軸通貨がポンドからドルへ変わったときは、どちらも一定のレートで金と交換ができたので、交代のリスクはさほど大きくなかった。だが、通貨の価値が金によって裏付けられていない今日、基軸通貨の転換が起きたら、需要と供給のバランスによっては、通貨が暴落する可能性もある。」
基軸通貨が交代が起こると仮定して、ドルの次が何かを予想することよりも、
通貨暴落に備えてどう行動するか考える方が大事と言えるだろうか。
結婚したことで想定していた運用期間に異変が起きた。
生涯独身のつもりだった時は、残り30〜40年の時間軸でよかった。
でも今後は考慮すべき期間が無限に広がる可能性もあり、
私の代で考えうる基軸通貨の交代への対策も必要かもしれない。
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