グローバル化は意外とやっかいだ。
支配的な言語のもとに経済的な利益が集まりがちだから、
21世紀中に8割以上の言語が失われるとの指摘もある。
言語の多様性は文化の多様性の裏返しで、創造性の源でもある。
日本企業の「社内公用語を英語」の動きには大きな危機感を覚える。
またヒトやモノの移動、情報の伝達にお金のやり取りまで、
世界がひとつにつながろうとしている中で、
政治だけが一国単位で問題解決能力を失っているように見える。
こんな時代だからこそ、国際展開する企業の影響力は大きく、
だからこそ投資家としての私も責任ある行動が求められる。
ダニ・ロドリックは「グローバリゼーション・パラドクス」の中で、
国民民主主義とグローバル市場の間の緊張を解決する方法として、
- 国際的な取引費用を最小化する代わりに民主主義を制限して、グローバル経済が時々生み出す経済的・社会的な損害には無視を決め込む。
- グローバリゼーションを制限して、民主主義的な正統性の確立を願う。
- 国家主権を犠牲にしてグローバル民主主義に向かう。
の3つの選択肢があるという。
またこれは世界経済の政治的トリレンマの原理を示しており、
民主主義、国家主権、グローバリゼーションのうち、
同時に実現することができるのは2つまで、ということになる。
著者の選択は、過度なグローバリゼーションの制限。
- 市場と政府は代替的なものではなく補完的なもの
- 資本主義は唯一無二のモデルに従って形づくられるものではない
であることを経済史を振り返りながら読み解き、
だから民主主義と国家主権を軸に整えて、
世界経済の安定を取り戻そう、というのが著者の主張だ。
現在・過去の分析についてはバッチリだと思うけど、
未来への提言が、ページ数も少なく内容も薄かった。
でも政治経済学の視点でグローバル化を読み解いた良書だよ。
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