著者は麻布の日本料理「かんだ」の主人。
このお店もいつか行ってみたいなぁ。
「日本料理は、日本固有の食材と日本人の美意識を骨格としていると思います。食材の鮮度と品質がそのまま料理の本質に反映する料理です。良い素材を探し、その素材を最高においしいときに最小限の手を加えることによって完成する料理。」P4
たとえば日本の美意識「引き算の美学」が見え隠れするのが、
- お湯のなかに鰹節や昆布の味を「引き出す」出汁作り。
- 食材の苦みやえぐみを取り除く「灰汁引き」。
- 魚の生臭みを取り除く「湯引き」。
洋食は食材に様々な味を加えて完成させる「足し算」だけど、
和食は食材の一番美味しいときに最小限の手を加えるだけ。
「日本料理とは、日本の四季折々の旬を味わうことにほかならないと思うのです。日本料理には独自の技術の様式も、哲学ももちろんありますが、それらはすべて「旬」の食材の真味を引き出すためにこそあるのだと思えるのです。」P6
日本人が「旬」の食材を意識しはじめて200年くらいかな。
旬の食材は、
- 大量に収穫、水揚げされるから安い
- 栄養価が高い
- もちろん味もいい
江戸幕府の質素倹約の考えにも合致したから、
値段が高騰する「初物」ではなく「旬モノ」が奨励されたんだ。
でも今では普段の生活で「旬」を感じるのは難しい。
料亭に求めに行くような高級なものになってしまったね。
また著者が指摘する日本料理と他国の料理との違いを読むと、
「日本料理というのは、たいがいは、できたての一番温度の高いところが一番美味しいのですよね。フランス料理や中華料理というのは、油を介在して味が成り立っている場合が多いので、温度が下がってくるのが遅いのです。ところが日本料理のお吸い物やご飯というのは、油分が少なく冷めやすい。ピークが短いのです。」P141
「ヨーロッパは肉食が中心の食文化なので、素材を熟成させるという概念があるのですが、日本の場合は、圧倒的に鮮度重視。「ご馳走」という言葉にも表れているのですが、馬を飛ばして急いで届ける、新鮮なうちに届けたものがご馳走というわけです。」P191
日本人って昔からせわしないのかも。
そば、寿司、天ぷらは江戸のファーストフードだしね。
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