偶然の幸運をつかむために旅へ!/東浩紀「弱いつながり」

本屋で著者の名前をよく見かけるようになり、
手に取るたびに難しすぎて断念。が続いていた。
でも今回は出だしに惹かれて一気に読んだ。

ネットは階級を固定する道具です。階級という言葉が強すぎるなら、あなたの所属といってもいい。世代、会社、趣味……なんでもいいですが、ひとが所属するコミュニティのなかの人間関係をより深め、固定し、そこから逃げ出せなくするメディアがネットです。

弱いつながり私がFacebookを嫌悪するのはこれなんだ!!
この本のタイトルである「弱いつながり」とは、
マーク・グラノベッターが1973年に書いた論文

に由来するもの。
この論文は当時の就職活動の研究したもので、
有用な情報は、強い結びつき(家族や親友)ではなく、
弱い結びつき(ただの知人)から得られるという内容。

これを現代風に変換するのなら、
人付き合いはSNSを通じてゆるくつながるのが吉。
という考えになりがちだが著者の主張は逆だ。

世のなかの多くのひとは、リアルの人間関係は強くて、ネットはむしろ浅く広く弱い絆を作るのに向いていると考えている。でもこれは本当はまったく逆です。 ネットは強い絆をどんどん強くするメディアです。弱い絆はノイズに満ちたものです。そのノイズこそがチャンスなのだというのがグラノヴェッターの教えです。けれども現実のネットはそのようなノイズを排除するための技法をどんどん開発しています。

ノイズを排除する技術とは、
かつてイーライ・パリザーがTEDで指摘したような、
自分好みの無限ループ問題のことだ。

ネットが「見たいものが見れる」と期待されていた時代から、
「見たいものしか見ていない」時代へ変わってしまったのだ。

そしてネットが私たちから奪おうとする
弱い絆を取り戻す方法として著者が処方するのが、
旅に出ること

自分探しではなく、新たな検索ワードを探すための旅。ネットを離れリアルに戻る旅ではなく、より深くネットに潜るためにリアルを変える旅。

なぜ「新たな検索ワード」が大切かということを、
身近な例で語られた部分を紹介しておくと、

いまは経験や知識よりも、顧客の要望に応じていかに適切に検索するか、その能力こそがビジネスにおいて重要になっているということです。だからこそ、たえず新しい検索ワードを手に入れる必要がある。

そして著者がこうした提案をする問題意識の根底は、

偶然と必然の関係。この一回の人生と統計の関係。それがぼくの哲学のテーマであり、また本書の基底にある問題意識です。本書で「新しい検索ワードを探せ」という表現を繰り返しているのは、要は「統計的な最適とか考えないで偶然に身を曝せ」というメッセージです。

実は私もまったく同じことを考えていて、

  • むこう側からやってくる偶然
  • こちら側から迎えにいく偶然

この2つがうまく出会った時に起きる幸運、
すなわち「セレンディピティ」をいかにつかむか?

少なくとも迎えにいく偶然については、
著者が指摘するように「旅に出る」ことであり、
はるか昔にソクラテスが語ったことと変わらない。

世界を動かしたければ、まず自分を動かすことだ。

時が流れ、どんなに新しい技術が現れようとも、
「知」の方法は今も昔も同じなのだ。