月は東に日は西に。
井上陽水の歌にそんな歌詞があった気がするが、
これは江戸時代の俳人、与謝蕪村(1716~84)の
菜の花や月は東に日は西に
という絵画的な俳句の1つだ。
ふと気がつけば、蕪村の月は、
自らの想いを月に投影する和歌の月とは違い、
目の前の情景を匠に切り取ったものが多い。
月天心貧しき町を通りけり
静まり返った深夜の町に月の光のみが降り注ぐ。
都会に住んでいたらこの美しさは分からないね。
貧しき町が銀座通りだったら月光より電飾だから。
花火せよ淀の御茶屋の夕月夜
静寂な茶室での月見に花火を掛け合わせる。
花火大会は満月に合わせて開催すると風流かも。
寒月や門なき寺の天高し
月から寺に目を移し、もう一度天へ昇っていく。
まるでテレビ中継を見ているかのようだ。
もちろん蕪村の俳句は写実だけではない。
最後に「引き算の美学」が現れた句をひとつ。
欠け欠けて月もなくなる夜寒哉
徐々に月が欠けていき、とうとう今日は新月の夜。
そして心に染みる寒さだけが残った。
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