労働法の授業中に「ウォール街のランダムウォーカー」に夢中で単位を落とし、
危うく卒業できなくなりかかった過去を持つ私だか、一応は法学部出身。
脳や遺伝に関する本を読んでいると疑問に思うことがある。
- 構成要件該当性
- 違法性
- 責任
という流れで犯罪の成立要件を決めている刑法はどう変わるのだろう?
多くの脳科学の本に登場する、
脳の特定部位が人格に影響を及ぼすことを指摘した初めての報告は、
19世紀半ばのフィネアス・ゲージの事例。※詳細はWikipediaへ
簡単にまとめると、前頭前野の中央部の下側にある眼窩領域、
ここが損傷を受けると、社会的なルールが守れなくなってしまう。
これ以降、脳やDNAに関する研究が進み、
脳のスキャンやDNAの解析により犯罪を起こす可能性が分かる
というような未来が間近に迫ってきているように思える。
今回手にとった
では脳と遺伝に関する気になる記述が1つずつあった。
右脳と左脳をつなぐ脳梁の役割
右脳と左脳のつながりといえば、
ジュリアン・ジェインズがその著書「神々の沈黙」で示した
古代人がバイキャメラル・マインド(二分心)状態
にあったという仮説を思い出す。
私たちが文字を手にする以前は、右脳と左脳との連携が未発達で、
右脳に「神」が宿り、左脳である「人間」に語りかける状態。
だから意識というものが希薄だったのでは?という仮説だ。
バーバラ・オークレイはP160でこんな研究結果を紹介している。
「反社会的な人物は「脳梁」に奇妙な点がある。脳梁は神経の高速道路のようなもので、左右の脳半球を行き来する情報の流れを調整している。反社会的な人物の脳梁では白質の量が正常人の4分の1近く多いが、ひっぱられたキャンディのように長く、かつ細くなっている。」
「神経組織のこのような違いは、反社会的な人物が持つ不気味なほどの対人スキルの高さと感情の乏しさという奇妙なギャップとして、またストレスに対する無意識の反応の低さとなって現れるようだ。」
「脳梁の異常が人格に影響を及ぼすことがあるのはなぜだろう? それは脳梁の欠陥が左右の脳半球をの連絡を妨げているからだ。とくに、右脳がもたらすネガティブな気分を左脳が抑制することができなくなる。これによって反社会的な人物特有の攻撃的で無軌道な行動が現れるのだ。」
ジェインズのバイキャメラル・マインド仮説と話が違うのは、
脳梁ではなく左右の側頭葉をつなぐ「前交連」の話だからなのかな。
いずれにしても脳をスキャンすることで、
反社会的な人物かどうか分かってしまうことになる。
刑法では責任能力を欠くものは処罰しないと規定しているけど、
一見正常でも脳に上記のような異常が見られる場合は一体?
サイコパスは80%の確率で遺伝する!
脳梁の話よりも衝撃的なのは、
2005年にエッシ・ヴィディングが発表したという
「七歳時に見られるサイコパシーの顕著な遺伝的リスク証拠」。
その概要をざっくり箇条書きでまとめると、
- 1994〜96年に生まれた5000組の双子の研究結果”TEDS”を利用。
- “TEDS”は一卵性双生児では遺伝子が100%共通で、二卵性双生児では50%という差を利用して遺伝子の影響を調べる研究のためのデータペース。
- ヴィディングは3687組の双子を生徒に持った教師から生徒の性格的特徴を入手。
- サイコパス的特徴を持つ双子の要因の81%が遺伝性、残りの19%は環境要因であることが分かった。
- 軽度な反社会的特徴を持つ双子は遺伝の影響は30%。
遺伝率80%はとんでもない高確率だ。
親から受け継いだ遺伝子のせいで犯罪を犯してしまったとして、
責任能力うんぬんを言われても…という印象を持ってしまう。
ならば脳や遺伝子に異常の人は強制的に治療!みたいな制度は、
憲法の基本的人権の尊重あたりに引っかかってしまいそうだ。
ならば異常を認識し、自発的に治療をしたにも関わらず、
犯罪を犯してしまったら責任は問えない、みたいな方向なのかな?
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