デイビット・J・リンデンの「 脳はいいかげんにできている」。
ふと同じような話を昔読んだことがあるような?と調べていたら、
脳の見方に関するありがちな間違えに気付かされた。
脳は3段アイスのようなもの?
「人間の脳は、三段重ねのアイスクリームコーンのようなものだ。一段目のアイスクリームに相当する部分は、人間でも、両生類や魚類でもほとんど変わらない。二段目のアイスクリームに相当する部分は「辺縁系」、三段目に相当する部分は、「新皮質」と呼ばれる。人間らしさを作り出しているのは、二段目、三段目である。言語や推論といった高度で複雑な機能の多くは、新皮質で生じている。」
「人間の脳を他の脊椎動物の脳と比べてみると、脳は、ほぼ単なる「継ぎ足し」「寄せ集め」の産物であることがよくわかる。トカゲの脳とネズミの脳には違いがあるが、その違いは「全面的な設計のし直し」によって生じたものではない。ネズミの脳は、基本的にはトカゲの脳を土台に、新たな部品を継ぎ足しただけのもの、と言ってかまわない。同様に、人間の脳も、基本的にネズミの脳を土台に、部品を継ぎ足しただけのものと言える。脳は、進化の各段階で一すくいずつ積み重ねられてきたアイスクリームのような構造になっているのだ。」
脳の作りは単に新しい部分が上に積み重ねられてきただけで、
その場しのぎで寄せ集められた偶然の産物にすぎないということ。
だから神が設計した完璧なデザインだなんてお笑い草。
これが著者の主張の根底にあるように感じたが、
かつてポール・マクリーンが「 三つの脳の進化」(1990)
で示した仮説を編集し直しただけかもしれない。
ポール・マクリーン「三位一体脳モデル」
脳はおおよそ3層構造になっており、
人間は進化とともに新しい脳を獲得したという仮説。
- 脳幹…爬虫類脳(反射脳)
- 大脳辺縁系…哺乳類脳(情動脳)
- 大脳新皮質…人間脳(理性脳)
本能(反射脳)や感情(情動脳)を抑えるべく、
人間文化史のはじめに宗教や哲学が登場することを考えると、
なんとなく納得させられる仮説と言えるかもしれない。
そういえばレイ・カーツワイルが大脳新皮質をインターネットにつなぎ、
思考を拡大することで、知能が指数関数的な増加を遂げると予言していた。
私たちが4番目の脳を獲得するのは間近ということになるだろうか。
というように簡単に考えを広げていけるため受け入れやすいが、
現在では学術的には否定されている仮説のようだ。
- 比較神経科学からみた進化にまつわる 誤解と解説(「心理学ワールド」2016年10月号)
ここでも指摘はされているが、
下等生物から人間に向かって直線的に進化したというのは誤り。
今いるすべての生物が共通の祖先から枝分かれした進化の先端におり、
人間だけが進化の最先端にいるという考え方は幻想にすぎないのだ。
時間と経過とともに進歩や革新が感じられる人生や社会でありたい。
そんな私たちの願いが、時に事実を捻じ曲げてしまうのはやっかいだ。
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