貨幣に正義を見たアリストテレス(ニコマコス倫理学)

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貨幣経済。これはなにかと批判の対象になる。

たとえば、

といったあたりがすぐに思い当たる。

昔も今も批判の対象は、
貨幣という単一の価値尺度でしか物事の軽重を判断できなくなる
ことへの危機感から生まれているように思う。

そんな考えに引きずられ、貨幣に悪役のイメージを付けてしまいがちだが、
アリストテレスはもっとシンプルに貨幣に「正義」を見ていた。

ニコマコス倫理学」で「正義」について記された5巻の5章。
この中で貨幣と正義の関係が言及されている。

「作り手が同じものを同じ量と同じ性質のものとして作ったものを、受け手がまさにそのものを同じ量と同じ性質のものとして受け取らなかったとすれば、そうした技術は破壊されることとなるからである。実際、二人の医者からは共同関係は生まれず、医者と農夫から生まれるのであって、総じて異なった、しかも平等ではない人たちから、共同関係は生まれるのである。つまり、その人々は、互いに平等にされなければならない。したがって、そのための交換の対象は、すべて何らかの仕方で比較可能なものでなければならない。まさにこのために貨幣は導入されたのであり、これがある仕方で中間のものとなっているのである。」

共同体が成立し、人々の間で友好的な関係が成立するためには、
人々が所有しているものを計量する共通する尺度が必要。
人々の価値基準を仲介をする貨幣は、正義が成立するための前提であると。

貨幣のそもそもの意義を忘れてしまうと、
ついつい批判的な考えに流されてしまうので気を付けないと。

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