1901年にスタートしたノーベル賞の賞金や運営費は、
アルフレッド・ノーベルの遺産の運用で成り立っている。
独立性を保つために寄付を受け入れていない方針だから、
純粋に資産運用の腕次第、という組織形態は興味深い。
ノーベル財団のウェブサイトで多少は情報が得られる。
年次報告書"Annual Report 2017"によると、
運用資産は45億スウェーデンクローナ(日本円で約565億円)。
そのポートフォリオは
- 株式…50%(スウェーデン10%、海外40%)
- 債券…18%(北欧の国債14%)
- オルタナティブ…32%(不動産7%)
2010年以降に債券投資を減らし、ヘッジファンド投資が増加。
一時期はオルタナティブが41%にも達しており、
リスクを取りすぎでは?と驚いたが、現在は再び債券を増やしている。
また近年は運用パフォーマンスが非常に好調のため、
2012年に1,000万SEKから800万SEKに減額されていた賞金が、
2017年に900万SEKに増額になっている。
- 2008年…-19.0%
- 2009年…+14.4%
- 2010年…+5.5%
- 2011年…-2.6%
- 2012年…+7.8%
- 2013年…+15.3%
- 2014年…+15.8%
- 2015年…+7.7%
- 2016年…+6.0%
- 2017年…+8.6%
しかし1970年代までは運用成績がまったく振るわず資産が減少。
受賞者への賞金額も1940年代から80年代初めまでは、
設立当初の賞金の3割程度にまで押さえる必要があった。
ノーベルの遺言を忠実に守り、
「安全証券(safe securities)」による運用、
にこだわり、
1950年代前半に運用規定が改定されるまでは、
- 不動産
- 債券
- 担保付き貸付
を中心に運用し、
インフレで資産が目減りしたのが原因のようだ。
運用の自由度が増してからは運用成績は年々向上し、
1987年に運用資産、1991年に賞金額が創立時の実質価値を回復。
ノーベル財団が財政的に安定したのはここ2,30年のことだった。
※参照データ…"Table showing Prize Amounts"
最後に1年間の財団の支出額について。
年間支出は約十数億円で内訳は以下の通り。
- 賞金(全5賞)…6億円
- 選考機関の運営費…4億円
- 授賞式、祝賀晩餐会の経費…2.5億円
- スタッフ給与など財団経費など…2.5億円
約560億円の運用資産から生み出すリターンをこれに充てる、
と考えると年間3%程度の利回りで十分なので、
もう少し守備的なポートフォリオでも良いのかもしれない
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