岡倉天心「茶の本」の美文集

不完全の美」をテーマにした昨日の記事を書く際に、
編集の過程でこぼれ落ちてしまった美文をまとめて紹介。

"Tea is a religion of the art of life. The beverage grew to be an excuse for the worship of purity and refinement, a sacred function at which the host and guest joined to produce for that occasion the utmost beatitude of the mundane."

(茶は「生の芸術」の宗教である。それは純粋と洗練への崇拝であり、主客が一緒になって現世に最上の幸福を創り出すのが茶会である。)

「茶の本」と同時期に発表された新渡戸稲造武士道」(1900)。
西洋人に「日本人って無宗教?道徳的にどうなのよ?」と問われ、
新渡戸は「武士道」で、天心は「茶道」で答えたって感じかな。

"At the moment of meeting, the art lover transcends himself."

(出会った瞬間にすべてが決まる。そして自己を超越する。)

芸術鑑賞について論じた第五章より。
自己を超越して無限を垣間見る、と続くんだけどすさまじい。
美術は分からないけど、そんな料理に出会えたら。。。

ちなみに天心は芸術鑑賞において、
歴史的な共感に審美眼が乱されないようご用心、と説いている。
現代の「モナ・リザ」賛美を彼ならどう斬るのだろうか?
また第七章の出だしにも

"In religion the Future is behind us. In art the present is the eternal."

(宗教においては未来はわれわれのうしろにあり、芸術においては現在が永遠である。)

時間論を踏まえた芸術論が展開される。
無限を感じるための「不完全の美」が日本の美意識なのだから、
ここでの宗教は西洋、芸術は日本の感覚を表しているのかも。

"In joy or sadness, flowers are our constant friends. We eat, drink, sing, dance, and flirt with them.・・・ We dare not die without them."

(喜びにつけ悲しみにつけ、花は不断の友である。私たちは花を友に、食事をし、酒を飲み、歌を詠み、踊り、そして恋をする。・・・花がなくては死ぬこともままならない。)

この他にも花を
"teardrops of the stars"(星の涙滴
と美しく描いた、花への愛をつづった第六章。


平和で穏やかだったあの頃を「野蛮」と西洋人に揶揄されて、
多くの命を奪い、また失うことで「文明国」の地位を獲得した日本。
渡辺京二逝きし世の面影に描かれたような、
美しい日本が失われていくような切迫感、そして焦燥感。。。
こうした背景から英語で世界に発信された、

は日本人なら必ず手にとりたい名作。年末年始にいかが?

※続き→岡倉天心「茶の本」の美文集・その2