トマ・ピケティ「21世紀の資本」が世界的に注目されて以降、
格差や富の集中に対する批判が目に見えて増えている。
でも「幸福度」の観点から分析すると、思いもよらない結果が得られる。
エドガー・カバナス、エヴァ・ルイーズ「ハッピークラシー」を読んでいて、
そんな論文が発表されていることを知った。
ウェブ上で全文を読むことはできないが“Abstract”には、
- 開発途上国…所得の不平等は幸福の増大と関連している
- 先進国…所得の不平等は個人の幸福にはプラスの効果もマイナスの効果もない
と書かれている。
また「ハッピークラシー」で引用されている論文の記述は、
「現在、そして過去において、所得の不平等を縮小するために多大の努力がなされている。経済成長を犠牲にしても不平等を抑制しようという意欲が広範に見られる。そうした努力は概して見当違いだということが、われわれの研究によって示された。何が見当違いかというと、われわれの調査結果のとおり、社会的な所得の不平節は概して個人の主観的ウェルビーイングを減らさないからだ。発展途上国では、不平等はどちらかといえば幸福を増大させる。つまり、現在、世界銀行等の機関が所得不平等を縮小するためにおこなっている努力は、貧しい国々の人々に害を及ぼすおそれがある。」
開発途上国では、富裕層の成功を目にすることで、
自分にもチャンスがあると受け止め、希望や幸福感が増すのだという。
これまで読んだ本の中での関連する話と言えば、
- 経済的平等性を追い求めることに価値はない。貧困を救済し、個々人が十分と感じる富を有することが重要。(ハリー・フランクファート)
- 所得分布の平準化が起きたのは、2回の世界大戦時のみ。格差解消より貧困率減少に目を向けるべき。(スティーブン・ピンカー)
というようなものがあった。
健康で文化的な最低限度の生活が担保された上での経済的格差は、
批判の対象ではなく、むしろ歓迎すべきもの、ということになるだろうか。
ただ昨今の批判は、リーマン・ショック以降、金融緩和が実施されるたびに、
富裕層に富が集中しているのでは?という観点が多いように思う。
この論文の元になったデータベースは1981~2008年なので、
最新のデータでやりなおすと、先進国の結果はどうなるのだろう?
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