滋賀の食事文化研究会「ふなずしの謎」

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鮒ずし会席の宿「湖里庵の本棚に並んでいた本。

宿にちなんだ本、その地域に関連する本は、
そこを訪れないと目に留まることのない本だから、
旅先で出会う本棚は、知的好奇心を刺激してくれる。

1995年に出版された本で、約30年前のため情報は古い。
本書で危惧されているニゴロブナの漁獲量減少は、
その後も回復することなく、横ばいで推移している。

かつては琵琶湖周辺に多くの内湖が存在し(戦後の干拓で埋め立て)、
大量にフナが獲れたため、各家庭で鮒ずしを作る習慣があったそうだ。
夏野菜がたくさん収穫できたら、とりあえず漬物にする感覚と同じ。

また昔から近江は近畿の倉と呼ばれる穀倉地帯で、
若狭や伊勢から京都へ向かってが運ばれる通り道でもあり、
琵琶湖の適度な湿気が微生物を育ててくれる。
いろいろな条件が揃っていたから、近江で鮒ずしが生まれたのだ。

ちなみに食品の保存方法としては塩漬けが一般。
なぜ鮒ずしに米が使われているかというと、
すし発祥の地が東南アジアの山岳地帯だったから。
海から遠く塩が貴重品だったため、最小限の塩で保存した後、
穀物に漬け込むという方法が考えられたのだと言う。

東南アジアから中国大陸、朝鮮半島を経て日本に渡ってくる。
若狭湾を経て、近江に伝わったルートが考えられるため、
鮒ずしは「日本に現存する最古の寿司」と紹介されることが多い。

しかし材料となる二ロコブナが減少したことで、
今では鮒ずしは幻の珍味になりつつある。
私も徳山鮓湖里庵に宿泊した時にしか食べたことがないと思う。

もちろん資源回復のための対策も取られている。
魚の産卵・生育場所であり、水質浄化も助けてくれる、
琵琶湖の湖岸に生えるヨシ群生の回復を目指して、
滋賀県は1992年に「ヨシ群落の保全に関する条例」を公布。
1953年の約260haまでの回復を目指している。(2014年時点で180ha)

ただ今後、漁獲量が回復したとしても、
各家庭で鮒ずしを漬ける文化が廃れてしまっているので…。

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