「人が美しいと感じるもの=遺伝子を残すのに最適」 を説く本を読み、
なんか遺伝子が過大評価されているような変な感じがあった。
リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」が注目されてからかな。
遺伝子の「遺」が「意」に変わり、意思を持つように語られはじめたのは。
シンプルにまとめると、長期的に最良の遺伝子が生き残る、ってこと?
なんかどこかで聞いたことある台詞だよね。市場原理主義っぽい。
進化の歴史の中心に遺伝子を据え、経済合理性を見出す感じが。
でも、合理性の上に何かを積み上げるのは机上の空論だと思う。
羽生善治さんが将棋の最善手について語った部分を引用すると、
「最初の駒をあまり動かしていない状況ならば、プラスの手段はたくさんあります。でも、プラスの手を重ねていくうちに、いつかある飽和点に来るでしょう。・・・プラスの手を積み重ねていくから、だんだん選択肢としてマイナスの手が多くなってゆくんです。最も効率的なことをやり続けていくことは、原則として不可能です。」(勝ち続ける力・P209)
どんな学問も論理や数字で単純化することでしか、
偶然の絡み合う複雑な世界を解き明かすことができないのか?
意味を求めるあまり、本質的なところを見失ってしまう。
たしかノルベルト・ボルツが「意味に餓える社会」で危惧してたこと。
生物学もこんな調子なら読んでおいた方がいい本は、
ノーベル生理学・医学賞受賞(1965)のジャック・モノーが書いた
「偶然と必然-現代生物学の思想的な問いかけ」だろうな。
生物学は偶然が支配する学問、と言及して話題になったらしい。
「科学的方法は、自然は客観性をもっているという当然の仮定の上に置かれている。つまり、ある現象を最終原因すなわち目的の面から解釈することで真実の認識に到達できるという考えを、否定しようという体系なのである。この原理が発見された日時は正確に述べることができる。ガリレイ及びデカルトによって定式化された慣性の法則は単に力学の基礎となったばかりか、近代科学の認識論の基礎を築くことともなったのである。」(P23)
40年も前に出版されて絶版にならずに読まれ続ける名著。
以前挫折したけど、ちゃんと読んでみないと。
コメント