ダーウィン「種の起源」の名言は、後世の誤った要約?

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美は命を絶やさないための手段のひとつであり、美に対する愛情は人間の生物学に深く根ざしているのだ。

---ナンシー・エトコフ「なぜ美人ばかりが得をするのか」P268

なんて本を読んで以来、生物学に少し興味が沸いて考えてみると、

意思を持っているかのように語られる遺伝子と進化の研究は、

経済・経営関係の分野と同じ問題を抱えているような気がしてきた。

→関連記事:遺伝子は意思を持った意伝子なのか?(12/05/12)

とはいえ生物学のことはまったく分からないから、

とりあえず先週末は、ダーウィン種の起源」を読んでみた。

光文社から2009年に新訳が出ていてずいぶん読みやすかったよ。

なんか変だなと思ったことが1つ。

「種の起源」の名言として講演やコラムで引用されるのを見かける、

もっとも強いものが、あるいは最も知的なものが、生き残るわけではない。もっとも環境の変化に対応できたものだけが生き残る。

って言葉が見当たらない。

新訳だからかな?と思って調べてみたけど、この言葉の出典は不明。

海外のサイトには20世紀に書かれた要約本が出典、みたいな記述も。

これに近いダーウィン自身の言葉を拾うと(自然淘汰の章より)、

生物の生存にとって有用な変異が実際に起こるとすれば、そのような形質をもった個体は、生存闘争において保存される可能性が間違いなく最大になるだろう。・・・このようにして個体が保存されていく原理を、私は略して自然淘汰と呼んでいる。・・・自然淘汰は、形質の分岐も引き起こす。それは生物が構造、習性、体質面で分岐すればするほど、一つの地域に生息できる生物が増えるからである。・・・多様化した子孫ほど、生きるための闘いで勝利する可能性が高くなることだろう。」(上巻・P224~225)

世間に流通する名言と少し意味が違うかな。

多様な子孫を遺しておけば、環境が変わっても生き残るだろうね、

くらいのゆるい感じで、自ら変化し環境に適応する、って強さはない。

そもそもダーウィンの文章はダラダラ長くて訳しにくい!

と訳者がぼやいてるくらいだから、あんなスッキリした名言は…(苦笑)

とにかく、引用するならページ数までちゃんと書かないとね。

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コメント

  1. Martin より:

    あれはダーウィンの名言ではなく、Leon C. Megginsonによる言葉ですね。
    私もダーウィンが記した言葉なのか否かを調べていて知りました。