紅葉の時期が近づいてきた。
東京でもほんのり色付きはじめた木も見かける。
紅葉の和歌といえば真っ先に思い浮かぶのが、
百人一首に収録される在原業平の一首。
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
多くの専門家は口を揃えて、
業平はもっと良い歌をたくさん詠んだのに、
なぜこの歌が百人一首に選ばれたのか疑問と言う。
でも子供の頃、私にはこの歌は覚えやすかったし、
川を鮮やかに染める紅葉が目に浮かぶようで好き。
※からくれなゐ(唐紅)…鮮やかな濃い紅色のこと
引用元の古今和歌集(294)には、
「二条の后の東宮の御息所と申しける時に、御屏風に竜田川に紅葉流れたるかたをかけりけるを題にてよめる。」
屏風絵をめでた歌である旨の詞書きが付され、
素性法師が詠んだ一首(293)と一緒に掲載されている。
もみぢ葉の 流れてとまる みなとには
くれなゐ深き 波や立つらむ
業平は入内前の二条の后(藤原高子)と恋仲にあった。
伊勢物語に描かれたように有名な話だったようだから、
素性法師の歌は2人の過去を揶揄しているような…。
そして「からくれなゐ」に染まっていたのは、
かつての業平自身の心だったのかもしれないね。
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