世間に価値判断を委ねない/マルクス・アウレリウス「自省録」

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前回のポッドキャスト収録で、
株式投資において辛抱強さを身につけるには?
とrennyさんから問われて、古典を読むことと回答。

禅の問答集と答えている時、思い描いたのは「正法眼蔵随聞記」。
私の愛読書「徒然草」にも似たようなテーマが記されている。

また、日本以外の古典として例に挙げたのが、
ローマ帝国の五賢帝、マルクス・アウレリウスが遺した「自省録」。

マルクス・アウレリウスがローマ帝国の皇帝になった頃、
地球規模の寒冷化の影響で、北方民族が南方へ移住をはじめる。
そして南下してきたゲルマン民族との戦いがはじまり、
その陣中で書き綴られたのが「自省録」とされている。

また当時のローマでは天然痘のパンデミックも起きており、
次々と降りかかる困難に立ち向かう心の強さを維持するために、
書くことで心を整えようとした一冊と捉えることもできるだろう。

「自省録」の中から投資に役立ちそうなものは、

「他人の魂の中に何が起こっているか気をつけていないからといって、そのために不幸になる人はそうたやすく見られるものではない。しかし自分自身の魂のうごきを注意深く見守っていない人は必ず不幸になる。」(2巻-8)

「周囲の事情のために強いられて、いわばまったく度を失ってしまったときには、大急ぎで自分の内にたちもどり、必要以上に節度から離れていないようにせよ。たえず調和に戻ることによって君は一層これを支配することができるようになるであろう。」(6巻-11)

「自分の内を見よ。内にこそ善の泉があり、この泉は君がたえず掘り下げさえすれば、たえず湧き出るであろう。」(7巻-59)

「君がなにか外的の理由で苦しむとすれば、君を悩ますのはそのこと自体ではなくて、それに関する君の判断なのだ」(8巻-47)

世間に価値判断の基準を委ねてはならない。
もちろん、ある一定の所までは既存の知識を学ぶべきだが、
そこから先は自らの心のありようが、投資の成否を決める。

というような投資の心得を古典を通じて学んできたつもり。

難しいのは、古典が思考を深めたり、生き方の指針となるのは、
人生を揺るがすような体験とセットで訪れる
ということ。
たとえば私の場合は、

  • MBA取得の課程で日本の歴史・文化を学ばなければならない切迫感を覚えて和歌集へ。
  • リーマン・ショック、東日本大震災を機に、善悪の境界や偶然、リスクをどう捉えるべきか?等々にまつわる哲学・科学書へ。

というように、何らかの外的な刺激を受けて、好奇心が立ち上がった時。

ただ漫然と読みあさるだけでは身につかない難しさがある。
それでも、歴史の中で読み継がれてきた書物をお薦めしたい。
必ずや投資に限らず、人生を豊かにするヒントが得られるはずだから。

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