フランクリンの人生論「13の徳目」「心の代数」

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五島慶太が家を建てる以前の五島美術館の敷地は、
ロバート・ウォーカー・アーウィンという人物の別宅があった場所で、
この人はベンジャミン・フランクリン(1706~90)のひ孫なんだとか。

そんなことを知ったのをきっかけに、
フランクリンについて昔調べたことをまとめ直した。
幸福に生きるために必要な習慣や意思決定の方法など、
フランクリンという人物の誠実さがよく分かる内容だ。

幸福になるための13の徳目

フランクリンは自伝の中で、

「私は人間と人間とのあいだの関係においては「真実」「誠意」、それに「高潔さ」の3つが幸福な生活をするために絶対不可欠なものであると確信するようになっていた。」

と語り、人生を幸せへと導く習慣として、以下の13の徳目を提示した。

すべてを1度にやろうとせず、1.を身につけたら2.へというように、
1つずつ着実に身につけていくことが大事とのこと。

1.Temperance [節制]

Eat not to dullness; drink not to elevation.

頭が鈍るほど食べないこと。
酔って浮かれだすほど飲まないこと。

2.Silence [沈黙]

Speak not but what may benefit others or yourself; avoid trifling conversation.

他人または自分自身の利益にならないことはしゃべらないこと。
つまらぬ話は避けること。

3.Order [規律]

Let all your things have their places; let each part of your business have its time.

自分の持ちものはすべて置くべき場所をきめておくこと。
自分の仕事はそれぞれ時間をきめてやること。

4.Resolution [決断]

Resolve to perform what you ought; perform without fail what you resolve.

やるべきことを実行する決心をすること。
決心したことは必ず実行すること。

5.Frugality [節約]

Make no expense but to do good to others or yourself; i.e., waste nothing.

他人または自分のためにならないことに金を使わないこと。
すなわち、むだな金は使わないこと。

6.Industry [勤勉]

Lose no time; be always employ’d in something useful; cut off all unnecessary actions.

時間をむだにしないこと。
有益な仕事につねに従事すること。
必要のない行為はすべて切りすてること。

7.Sincerity [誠実]

Use no hurtful deceit; think innocently and justly, and, if you speak, speak accordingly.

策略をもちいて人を傷つけないこと。
悪意をもたず、公正な判断を下すこと。発言をする際も同様。

8.Justice [正義]

Wrong none by doing injuries, or omitting the benefits that are your duty.

他人の利益を損なったり、与えるべきものを出し渋ったりして、他人に損害をおよぼさないこと。

9.Moderation [中庸]

Avoid extremes; forbear resenting injuries so much as you think they deserve.

両極端を避けること。
激怒するに値する侮辱をたとえ受けたにせよ、一歩その手前でこらえて激怒は抑えること。

10.Cleanliness [清潔]

Tolerate no uncleanliness in body, cloaths, or habitation.

身体、衣服、住居の不潔を黙認しないこと。

11.Tranquillity [冷静]

Be not disturbed at trifles, or at accidents common or unavoidable.

小さなこと、つまり、日常茶飯事や、避けがたい出来事で心を乱さないこと。

12.Chastity [純潔]

Rarely use venery but for health or offspring, never to dullness, weakness, or the injury of your own or another’s peace or reputation.

性の営みは健康、または子孫のためにのみこれを行なって、
決してそれにふけって頭の働きを鈍らせたり、身体を衰弱させたり、
自分自身、または他人の平和な生活や信用をそこなわないこと。

13.Humility [謙遜]

Imitate Jesus and Socrates.

キリストとソクラテスにみならうこと。

13個の徳目に関連する有名な話として思いつくのは、
フランクリンが若かりし頃、論争好きな人間だったが、
ソクラテスの弁明」を読み、考え方を変えたという話。

ソクラテスの謙虚な問いかけの姿勢に感銘を受け、
会話をする際には相手の意見を尊重し、
「確実に」「間違いなく」
といった断定的な物言いをあらためようと心に決めたのだとか。

冷静な決断するための心の代数

上記の徳目にもうひとつ加えるとしたら「熟慮」。

フランクリンは貴族の子女の教育係を受けるべきか悩む友人に、
決断するための思考法として「心の代数 “Moral Algebra”」を提案。

※手紙の原文はこちら

  1. 紙の真ん中に線を引きふたつに分ける

  2. 左側を賛成、右側を反対の領域とし、その理由を数日にわたって書き出す

  3. 一通り出尽くしたら、個々の理由の重み付けを考える

  4. 賛成の理由と反対の理由の重要度が同じであれば相殺していく

  5. 最後にどちらの側の理由が残ったかに従って決断を下す

知識や経験を積み重ねれば、積み重ねるほど、
自信過剰から本質を見失い、判断を誤ってしまうことがある。
そうした失敗を防ぐためには、フランクリンのような慎重さが必要だ。

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