Amazonプライムビデオのドラマ「天正遣欧少年使節 MAGI」がおもしろい。
これまで戦国・江戸時代のキリスト教研究は、
ラテン語が読めるカトリック系の大学の研究者が主導してきたため、
闇の部分は覆い隠され、弾圧や殉教を中心に描かれてきた。
しかし近年は見直しが進んだことで、
このドラマでも登場するカトリック関係者の次のような言動に、
- 黒人奴隷をモノ扱いし、異国民というだけでさげすむ
- 海外に売られていく日本人奴隷を見て見ぬふりをする
- イエスの「敵を愛せ」という教えに反して異教徒を虐殺する
遣欧使節の少年達が疑問をいだき、苦悩する姿が描かれており、
かなり史実に近い仕上がりになっているのではないか。
またこのドラマを機に同時代を描いた新しめの本を探してみたところ、
平川新「戦国日本と大航海時代」が最新の研究を踏まえていて興味深い。
カトリックの側からの歴史観に染められた日本史では、
バテレン追放や二十六聖人殉教の事件を起こした豊臣秀吉は、
狂った支配者であり、明を征服しようしたのも狂気の沙汰となる。
しかしイエズス会の書簡を読み解くと、
- イエズス会が日本征服を計画して、スペイン本国に派兵を要請していた。
- 日本征服は無理でも九州のキリシタンを先兵に明国を征服する。
といった陰謀が明らかであり、
またスペインとポルトガルによる世界領土分割計画を知ったことで、
両国に対抗する手段として、秀吉が明の征服を計画した可能性があるとのこと。
そして秀吉の朝鮮出兵は失敗したものの、その軍事力を目の当たりにした宣教師たちが、
書簡の中で日本を「帝国」と称するようになり、
また家康には本国の王と同等の「皇帝」の敬称を用いるようになったことから、
日本を征服の対象ではなく対等の国として認めるようになったことが読み取れるという。
中国の国力が弱くなっている時に列強に取られる前に…
という感覚が明治以降の日本に似ていて興味深い。
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