書店で「仮説○○」というタイトルの本が並んでいるのを見て、
十数年前に挫折した岩波文庫をもう一度、手にとってみた。
チャールズ・サンダース・パース(1839-1914)は、
推論や探究の方法を3つに分類し、
- 仮説形成(アブダクション)
- 演繹…仮説から論理的に導かれる結果を確認するための方法
- 帰納…実際の観察結果と仮説が一致するか確認するための方法
仮説を立てることが、探究の第一歩であると提唱した人物。
本書は1898年の講演録をもとにしたものということで、
パースの著作としては難易度低めの一冊らしい。
でも数学、論理学、哲学、科学と縦横無尽に話が展開し、
読書経験を重ねても、まだまだ私には理解困難だった。
しかし十数年前とは違い、こんな時はAIを使うことができる!
連続性と仮説形成のつながり
私が最も理解できなかった、
「連続性」が「仮説形成」にどうつながっているのか?
という点についてAIに質問を浴びせて、以下に整理してみた。
まずパースの連続性は、その宇宙観に基づいていて、
- 偶然的な混沌状態(第一性)
- 秩序(第二性)
- 習慣化(第三性)
というステップを踏んで宇宙が進化していくことを土台にしている。
探究の過程には、観察、仮説形成、検証といった流れが重要。
だからパースは、思考や認知が瞬間的で断絶するものではなく、
時間とともに進化する連続的なものであることを強調したかった。
「人間の推論一般の素晴らしい性質とは、推論は基本的にそれ自身を訂正する性向をもっており、推論がより賢く計画づけられていれば、それだけその可能性も大きいということである。」
当初の仮説的推論に誤りがあったとしても、
知識や経験は断絶せずに、連続していくのだから、
探究を続けていれば、誤りを訂正できるということか。
パースが説いた学びの作法
AIの助けなしに、これは重要な指摘だなと理解できたのは、
物事を学ぶ時の姿勢について語られた部分。
「真理を学ぶために必要なことはただひとつしかなく、それは真なることを心から積極的に学ぼうとすることである。」
「学ぼうとする意思が前提とする第一の事柄は、自分自身の現在の信念状態に対する不満である。」
「推論の第一の規則であり、ある意味では唯一の規則であるものとは、人が何かを学ぶためには、学ぼうと欲しなければならず、初めから心が傾いている考えに満足してはならない、ということである。」
現在の考えに固執し、押し通そうとするための学びは無価値。
これはパースの説いた、探究を邪魔する四つの考え方にもつながる。
- 絶対的な断言
- いくつかの事柄は絶対に不可知であると主張すること
- 科学におけるあれこれの要素が根本的かつ究極的であり、他のものから独立であって、それ以上の説明を寄せ付けないと主張すること
- あれこれの法則や真理が、最終的で完全な定式化を与えられていると主張すること
自分と世の中との関係を固定すれば安心は得られるが、
関係がゆらいでこそ、驚きや感動が生まれ、新たな仮説につながる。
このあたりを勘違いすると無駄な努力を積み重ねてしまう。
当初の目的から脱線して、学びの作法を確認させてくれた一冊だった。
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