ボードリヤール「消費社会の神話と構造」の「希少性」に思う

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ボードリヤールの代表作と言われる「消費社会の神話と構造」。
1970年出版で時代が異なるから分かりにくいのか、
そもそも文章が難解なのか…、分からないなりに気になった箇所。

「われわれの生産至上主義的産業社会は希少性に支配されており、市場経済の特徴である希少性という憑依観念につきまとわれている。われわれは生産すればするほど、豊富なモノの真っただ中でさえ、豊かさと呼ばれるであろう最終段階から確実に遠ざかってゆく。というのは、成長社会において、生産性の増大とともにますます満たされる欲求は生産の領域に属する欲求であって、人間の欲求ではないからである。そして、システム全体が人間的欲求を無視することの上に成り立っているのだから、豊かさが限りなく後退しつつあることは明白である。それどころではない。現代社会の豊かさは、希少性の組織的支配(構造的貧困)が優先するために、徹底的に否定される。」

わかりやすくすると、こういうことかな。

  • 物質的豊かさが達成されても、人々は常に他者との差異を求め続ける。この欲求が、新たな希少性を生み出す要因になる。
  • 無限の成長を目指す経済秩序の中では、自立的な欲求は存在しない。システムが過剰な欲求を生産し続ける。
  • 競争心をかき立てる欲求と生産の間に恒常的な緊張が存在し、目指していたはずの「豊かさ」からはどんどん遠ざかる。

なんでここが気になったかと言うと、
「日本株なんてもうダメでしょ?」という質問に対して、
別の考え方もできるよと紹介している話と少しつながる。
そしてそれがいいことなのか?と考えさせられた。

日本は今まで国内経済の規模がかなり大きかったから、
同業界に複数の大企業が存在して、余計な競争ですり減っていた。
たとえば、家電業界が無意味な高機能をつけて、
国内の同業他社との違いを示そうと躍起になっているうちに、
海外でのシェアを失って落ちぶれていったように。

これからは人口減少と国内経済の規模縮小に伴い、
日本企業同士で戦うことが、さらに無意味になっていく。
いち早くM&Aによって、1つの企業にまとまって、
より多くの資金と人材を将来に投資できる体制を作る。
そうすれば日本企業はまだまだ世界と戦える。

これってボードリヤールの言う「希少性」を求めるのと同じこと。
企業の業績向上と株価の上昇にはつながるかもしれないが、
経済文化の多様性が失われ、社会の豊かさは失われる気がする。

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