ジョージ・ソロスの“reflexivity”(再帰性・相互作用性)

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“Foreign Affairs”別冊アンソロジーを読んだのを機に、
グローバル資本主義の問題点をえぐった名著をということで、
1998年に出版された一冊を取り寄せた(日本語版は1999年)。

絶版で手に入れづらい上に難解だが、現時点から振りかえると、
スーザン・ストレンジカジノ資本主義(1986年)とともに、
未来の起きる危機を織り込んだ預言書のような一冊だったと言える。

ソロスの世界の捉え方で特徴的なのは、

  • fallibility(誤謬性)
  • reflexivity(再帰性・相互作用性)

前者の“fallibility”(誤謬性)については、わりと分かりやすく、
ラプラスの悪魔やバタフライ効果等でも似たような話が出てくる。

「誤謬性とは、参加者の思考と事態の実際の状況との間における不一致を意味する。」

つまり私たちの世界に対する理解や知識は、
基本的に何かの点で間違っているか、歪んでいるということ。

そして問題は“reflexivity”(再帰性・相互作用性)。

本文中の解説で短い部分を抜き出していくと、

「思考と現実との間で相互に反射的なフィードバック・メカニズムが働くという概念である。」

「金融市場は現実をただ受動的に映し出すのではなく、みずから積極的に現実を創り出すのであり、その現実はまた金融市場が映し出すものである。そこには現在の決定と将来の事態の成り行きとの間に双方向に作用しあう関係があり、これを私は相互作用性(reflexivity)と名付けている。」

「現在の期待の変化が、それによって織り込まれる将来に影響を与えるのである。」

株式市場を例に考えると、多少理解できた気分になれるのだが、

  • 現時点の株価の割高・割安を理解しようとする(認識)
  • それぞれの未来像にもとづいて売買を行う(参加)

投資家の認識と参加によって、将来の推測が株価に現れ、
その株価が現時点に影響を与えるというフィードバックが働く。

つまりこの“reflexivity”(再帰性・相互作用性)によって、
「思い描いた未来」と「やがて起きる現実」との溝が埋まらなくなる。

経済学者はこの溝を埋めようと、私たちの認識に無限の力を託し、
「合理的」「効率的」「均衡」といった仮説を持ち出してきたが、
それは先の“fallibility”(誤謬性)に反することになる。

かくして市場メカニズムには根本的に欠陥があり、
現状(1998年当時)のグローバル資本主義は極めて不安定であり、
不健全かつ維持不能であるとソロスは説いた。

ところで19世紀後半にもグローバル資本主義は存在していたが、
現代版より安定していたのはなぜなのか?

次の3つのストッパーがあったからだと、ソロスは説明している。

  1. 帝国主義列強の存在し、資本の国際移動が制限されていた
  2. 金という形で単一の国際通貨が存在していた
  3. ある種の共有された信条と倫理規範が存在していた

そしてソロスは現代の信条や倫理についてこう嘆く。

「人々の尊敬を得るのは正直でも美徳でもなく、成功であるとき、なぜ人は正直である必要があろうか。社会的価値や道徳的規律が疑いをもたれているのに、マネーの価値についてはなんの疑いもない。それはマネーが本来の価値の役割を不正に使用している状況である。」

手に取るたびに、少しずつ理解できる部分が増えるように思うから、
この本は本棚に置いておかないといけないな。

グローバル資本主義の危機―「開かれた社会」を求めて
日本経済新聞出版
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