人の心はうつろいやすい/徒然草26段

人の心はうつろいやすい…。しみじみと感じたとき、徒然草の26段が深い。

風も吹きあへずうつろふ、人の心の花に、馴れにし年月を思へば、あはれと聞きし言の葉ごとに忘れぬものから、我が世の外になりゆくならひこそ、亡き人の別れよりもまさりてかなしきものなれ。

出だしの「風も吹きあへず」と「人の心の花」という言葉には、
うつろいやすい人の心を嘆いた、2つの和歌が潜んでいる。
まずは紀貫之の歌から。(古今和歌集・春歌下・83)

桜花 とく散りぬとも おもほへず
人の心ぞ 風も吹きあへず

桜は風に誘われて散ってしまうものだけど、
人の心という花は、風が吹かなくても散ってしまうじゃないか。

そしてもう1首は小野小町の歌。(古今和歌集・恋歌五・797)

色見えで うつろふものは 世の中の
人の心の 花にぞありける

花の色はその色があせていくのが見えるけど、
人の心の花は、気づかないうちに色あせ、やがて失われるもの。
小町だけに「人の心の花」は、やはり「恋心」のことだろう。
※「世の中の人の心」でくくって、「世俗の人の心」という解釈もある。

ふたたび、徒然草に戻り、この一文の意味をざっくりまとめておくと。

色あせ散りゆく花よりも、うつろいやすい恋心。
親しかった頃に、いとしい人と交わした言葉は忘れられない。
でも、いつの間にか別世界の人になり、記憶から消えていってしまう。
それが恋のならわし、というものだろうが、死に別れよりも悲しい。


平安時代の和歌が織り込んであったりで、きれいな一文。
恋心はもちろん、友情や信頼、尊敬、感謝まで…。
尊い気持ちはどうしてこんなにも簡単に薄れてしまうのだろう。
人の心はうつろいやすく、それに気づいてしまうと、ひどく悲しいね。

最近「徒然草」を手に取ることが、また増えてきて、危険な兆候(笑)
前回「徒然草」にハマっていたとき、スティーブ・ジョブズが絡まって、
とんでもない暴走がはじまった。→そのはじまりの記事がこれ

ジョブズは去ったけど、背中を押してくれた、彼の言葉は一生忘れない。
私も最期の日まで、自分の想いに大切に、丁寧に生き抜きたい。


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