行動遺伝学は日進月歩。一つの遺伝子だけで人生は語れない。

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遺伝と環境が私たちの人生に与える影響を研究する行動遺伝学

これから「文系」と呼ばれる分野の諸学問は、脳科学や遺伝学等、
私たちの内側の最先端を追求する学問によって様変わりしていく。
そんな予感がするので、個人的に注目している分野のひとつだ。

これまでもこれはおもしろいな!と思った話を書き留めていたのだが…。

行動遺伝学の日本の第一人者、安藤寿康と、作家、橘玲との対談本、
運は遺伝する」の中で、安藤氏が2つの研究に対して疑問を呈していた。

前者は「セロトニントランスポーター遺伝子」の型に着目。
これが長ければ(L型)幸福感が高く、短ければ(S型)抑うつ傾向とされ、
日本人はS型保有割合が世界で最も高く、なんとなく心当たりが…、
というような指摘がよくされているが、安藤氏はこれを否定する。

「集団内の個人差のレベルでは、セロトニントランスポーター遺伝子多型の違いが、神経質さと関連するという結果が出ていて、これはメタ分析にもかろうじて耐えられているようです。ただし、その効果量はせいぜい1%から2%程度しかありません。・・・遺伝子一つで文化差を説明しつくすのは無謀でしょう。」

後者は「ドーパミンD4受容体(DRD4)」のうち「DRD4-7R」に着目。
冒険家の遺伝子と捉え、さらに双極性障害(躁うつ病)と関連から、
起業家精神との関連を指摘したものだが、安藤氏はこちらもバッサリ。

「冒険家の遺伝子は一時、話題になりましたが、この説を指示する追試(検証)はできていません。」

国民性の背後に生物学的な要因があることを否定しませんが、ドーパミンの多様な影響を一つの遺伝子の多型だけで説明することには無理があると思います。」

自分が脳の罠にハマっていることに気付かされた。
私たちの脳は複雑な事象に単純なストーリーに当てはめがち
だから多様な遺伝子の中からひとつに着目して、
私たちの人生に当てはめてモデル化して納得したくなるのだろう。

行動遺伝学の分野もどんどん新しい研究結果が出てくるから、
おもしろそうな話に簡単に飛びつかないようにしなければ。
あとこの手の本は、なるべく最新のものを読まないとダメだね。

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