読書を習慣にしている人であれば必ず手元にある大ベストセラー、
最近、外山氏が投資歴60年を超える投資家であることを知った。現在94歳。
老化防止に個別株投資を推奨していることで注目されているようだ。
Googleに「外山滋比古 投資家」と入れるといくつか記事が出てくる。
- 損して撤退なんてだらしない投資家だよ 外山滋比古さん(日経新聞)
- 「株は損をするからこそ面白い」外山滋比古さん(NIKKEI STYLE)
「株式投資は僕にとってはレクリエーション。でもそのおかげで学問という本業でおカネもうけを考えずにすみました。」
なんてサラッと言ってのけるところがカッコいい。
この機会に著者が投資家であることを頭に入れて、
「思考の整理学」を読み返し、気になるフレーズをピックアップ。
1983年の作品だから投資歴が30年の頃に書かれたことになる。
「努力をすれば、どんなことでも成就するように考えるのは思い上がりである。」
案外これが投資家にとって、いちばん大切な考え方かもしれない。
統計数理研究所の調査によれば、日本人の7割近くが、
「努力すればいつかは必ず報われる」と回答するのだという。
しかし努力に見合った成功を手にしたいと誰もが願うものだが、
不確実性に満ちた現実世界、とくに証券市場では、結局、運がものをいう。
ほどよいところで「あきらめる」ことが人生でも投資でも大切なのだ。
あきらめることは「明らかに、見極める」ことなのだから。
もちろん努力のすべてが無駄ということではない。
努力を目標に向かって積み上げるものという考えに固執せず、
努力とは人生で充実を感じることを探し続けることであり、
幸運に出会う確率を高める手段、くらいにゆるく捉えるべきなのだ。
だいぶ脱線したが、著者はあくまで思考法の観点から話をしている。
「考えごとをしていて、テーマができても、いちずに考えつめるのは賢明でない。しばらく寝させ、あたためる必要がある。」
もうひとつ興味深かったのが次のフレーズ。
「忘れるのは価値観にもとづいて忘れる。おもしろいと思っていることは、些細なことでもめったに忘れない。価値観がしっかりしていないと、大切なものを忘れ、つまらないものを覚えていることになる。」
投資したい企業が見つかり、ひと通り調べたら、いったん放置する。
そのまま忘れてしまうなら、自分の価値観に合わない企業ということ。
自分に美学や美意識がないうちは、情報に振り回されがちで、
つまらない企業に「掘り出しもの!」と飛びついて失敗するものだ。
どうやって美学や美意識を磨くか? これが実に難しい。
好奇心の羽を目いっぱい広げて、いろいろな分野に触れるなかで、
忘れずに頭に残っていくものが、たしかな価値観を育むのではないだろうか。
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