信頼するに足る存在とは?/内村鑑三「代表的日本人」

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上場企業や運用会社のレポートで何を語って欲しいかと問われると、

きまって「失敗談が読みたい」と答えるのだが、あまり受け入れられない。

おそらく見栄やプライドが邪魔するのだろうが、

そういったものに囚われていない人こそが信頼できるのではないだろうか。

「世間の付き合いでは、われわれは長所よりも短所によって人の気に入られることが多い。」(ラ・ロシュフコー「箴言集」90)

内村鑑三が「代表的日本人」に描いた上杉鷹山像に面白いこんな逸話があった。

鷹山は米沢藩の藩主となる日に、春日神社に次のような誓詞を捧げたという。

一、文武の修練は自ら定めたとおり怠りなく励むこと

二、民の父母となることを第一の務めとすること

三、次の言葉を日夜忘れないこと

   贅沢なければ危険なし

   施して浪費するなかれ

四、言行の不一致、賞罰の不公平、不実と無礼を犯さぬよう慎むこと

これを今後堅く守することを誓う。もし怠るときはただちに神罰を下し、家運を永年にわたり消失されんことを。

この誓詞について内村鑑三はこう記す。

「あらゆる人々のなかで、鷹山ほど、欠点も弱点も数え上げることの難しい人物はありません。鷹山自身が、どの鷹山伝の作者にもまして、自分の欠点と弱点とを知っていたからであります。鷹山は文字どおりの一人の人間でありました。弱い人間であったからこそ、藩主の地位につく時、誓詞を神に献上じたのであります。」

つまり鷹山は自らの欠点や弱点を洗い出して神に捧げたのだと。

自らの弱さを自覚し、公言していたからこそ、

周囲の信頼が得られて、財政改革が成し遂げられたのではないだろうか。

私は成功は偶然に、失敗は必然に起きるものだと考えている。

だから成功を誇るのではなく、失敗からどう立ち上がろうとしているのか?

そういう姿を見せてくれる企業や投信に投資したいと願っている。

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