2014年にノーベル経済学賞を受賞したジャン・ティロール。
そのティロールが一般向けに書いた経済書の翻訳本が、
今夏に出版されていたことを知り、さっそく読み進めている。
第7章「企業、統治、社会的責任」で、企業の社会性をどう評価するのか?
とくに金銭的に計測できない業績や行動の重み付けの難しさを説いている。
ふと気付かされた論点が、CSR活動に熱心な企業ほど租税回避に積極的だということ。
「多くの多国籍企業が節税戦略を実行しつつ社会貢献に取り組んでいるでいるが、これをどう考えるべきか。現時点ではまだ結論は出ていない。」
この論点で投資家が何か行動を起こせるかといえば極めて困難で、
「企業が社会貢献活動をしようとする分野の行政の質はどうなっているか、という別の評価基準に左右される。」
投資家は企業の評価はできても、政治の評価は専門外で当てにならない。
「消費者、従業員、投資家が企業に善き行動を要望できるのは、その行動の結果や影響をきちんと理解できる場合に限られる。」
昨今、ESG投資の機運が盛り上がっているが、
投資家には何ができて、何ができないのかの整理が必要なのだろう。
「ラプラスの悪魔」のような全知全能の存在でもなければ、
ESG課題を網羅的に評価し、投資行動に移すことなどできないはずだから。
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