「ESG」を冠する投資信託は長期投資に不向きだ。

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とくにミレニアル世代(1980年代以降の生まれ)が、

単なる資産形成を目的とした投資ではなく、

社会的な課題解決にもつながる投資(インパクト投資)への関心が高い?

という調子で書かれた論文やコラムをよく見かける。

そのせいなのか、ブログの問い合わせフォームを通じて、

  • 株式投資で世の中にいい投資をしたい場合はどうすれば?
  • お薦めの投資信託はないか? どのように選べばいいのか?

といった質問が寄せられるようになった。

いただいた質問の回答代わりに、ブログの記事にして公開してきたが、

だんだん増えてきたので、ここでいったん整理してみることにした。

以下の代表的な2つの質問を例に編集し直した。

名称に「ESG」がついている投信を選べばいいですか?

私は「ESG」を冠する投資信託は長期投資に不向きだと考えている。

「E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)の視点を投資のプロセスに!」

なんて話は、これまでも長期投資においては当たり前に行われてきたこと。

それが「ESG」というキーワードで見える化されただけ
なのだ。

そして旬のテーマとして扱われた投資信託が息の長い商品に育つことはない。

たとえば環境関連の優良企業に投資する「日興エコファンド」(1999年8月設定)は、

設定後半年程度で約1,400億円もの集め、当時は大変注目された商品だった。

現在の純資産残高は100億円を切り、月次報告書でもやる気のなさが現れている。

「ESG」もテーマとして旬をすぎれば、「エコ」と同じ道を歩むだろう。
どちらも長期投資においては「何を今さら?」な話なのだから。

すでにESGを前面に出すのは当たり前すぎて恥ずかしい、

というような雰囲気も漂い始めているようにも感じている。

たとえば大手運用会社が積極的な情報開示に乗り出したことで、

個人投資家の関心を集めている、
ニッセイamの「げんせん投信

ESGを強調することはなく、運用プロセスの図で触れられているだけだ。

ゆえに名称にESGの入った投資信託が廃れるのは早いと思われ、

資産形成を目的とした長期投資には不向きな商品だと断言する。

JSIFの投信リストから選べばいいですか?

最も困った質問がこれ。

一般的にはそういう見方になってしまうよね…マズイなこれは。

日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)は、

欧米先進国で活動が活発な”Sustainable Investment Forum”の日本版。

日本のサステナブル投資の市場規模を集計し、世界に公表する役割があるのだが、

2015年以前は公募投資信託の純資産残高を合計する以外に方法がなかった。

その名残りでJSIFは「個人向け金融商品におけるサステナブル投資残高

の統計データの中で、集計の元になった投資信託のリストを公開している。

つまり推薦投信を並べているのではなく、統計データのためのリストにすぎない

実際にこのリストから投資信託を選ぼうとすると、どうなるか検証した記事が、

純資産残高の上位から選ぼうとすると、鎌倉投信「結い2101」以外に選択肢がなく、

条件を緩和し対象を広げることで、ようやく追加で2本見つかるといった苦しい状況。

もともと多くの投資信託の情報開示のあり方が、

「社会の未来に良い投資をしたい」と願う層に訴求できる状況にない、

という問題もある。

そもそも企業は解決したい社会的課題を事業にしているはずだから、

基本的にはどの上場企業に投資してもESG投資に該当する
ことになる。

だからどのような観点で投資先企業を良いと判断したのか、

顧客に伝える努力をしなければトンチンカン
としか言いようがない。

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